第1695回 感じる力 知る力

 令和7年 7月24日~

 やっと 蝉が鳴き始めました。
いつもより 梅雨が早くあけて 暑い日が続きましたが、
その暑さの中に、聞こえてくるはずの蝉の声が 今年は
まったく聞こえてきませでした。

 あまりの暑さに土壌が乾燥し、難くなって蝉が地上に
出てこれないのではないかと、心配をする声も聞かれました。
しかし、学校が夏休みになるころ、忘れることなく、地上にはいだして、
今は朝から うるさい声が響き渡っています。

 蝉の一生は とても波乱に満ちています。卵から幼虫になるまでは
一年は木に留まり、梅雨のころ地上に落ちて、土の中に潜り込んで
いくのだそうです。
このとき多くはアリなどに食べられてしまうそうで、
無事生き延びたものが、それから、地中で何年もの間、生活し、
暑い夏のほんの僅かの間だけこの地上に這い出して、精一杯泣いて
泣いて、やっと子孫を残し、あっという間に、この世を去って
いくのだそうです。

 暑い暑い 夏の間の僅かの間だけしか知らない蝉は、秋の紅葉の
季節や、冬の寒い時期、そして、春の新緑の様子にも気づかず、
知らずに一生を終わっていくのです。

 今、子どものころを思い出すと、小学生の頃は、小学校生活がすべてで、
やがて来る中学の生活も、大人になることも、意識せず生きていました。
若く元気な時には、歳を取り老いていくこと、
病におかされて、痛かったり苦しかったりすることも、
想像できずに生きてきました。
今から思えば、その瞬間瞬間を精一杯生き、 未来が、
次に来る世界があることを、意識することなく生きてきました。


 蝉と人間の違い 動物と人間の違いは 前の世代の人が体験し
感じたことを、次の世代に伝え残していくことができることです。
ああすれば良かった、こうすれば良かったと、気づいたことを
感じたことを、次の世代へ伝え残すことができることです。

ところが、その先輩達の声、言葉、教えを、素直に聞き
受け取ることの大事さに、なかなか気づかずにいます。
南無阿弥陀仏 南無阿弥陀仏のお念仏は、この僅か100年の人生だけが
すべてではなく、やがて生まれて往く世界があること。
蝉のように短い一生を終わっていくのではなく、次の世界があることを
教えてくださる言葉です。

その言葉を、聞き取る力が 感じ取る力があるか、ないかで、
私の一生は
 大きく違ってくるものです。

 今この世界がすべてではなく、次に来る世界があること、
先輩達の願いが、期待が、はたらきかけがあることに、気づく力
感じ取る力が 育ってくると、この人生は まるで違ってくるものです。

 夏の短い間だけ泣き続ける蝉のように、短い一生で終わるのか
それとも、先に生きた人々の願いを聞き、この人生の大事な
意味を、有り難さを感じ取ることができれば、私の人生は
まるで違ってくるものです。

 南無阿弥陀仏 南無阿弥陀仏を聞き、口にし、願いを感じとって
素晴らしい有り難いこの人生を、精一杯生き、味わいたいものです。

          


           私も一言(伝言板)