第1647回 さいごの仕事

  令和6年8月22日~
 
 あるご門徒さんが言われました。
「わたし、歳がいったらもう何もできません。
 あかんもん(だめなもの)になってしまいました」と

 そこで私は「いや、いや。まだ大事な仕事が残っていますよ」
と、言って次のようなお話をしました」

大阪府吹田市の光徳寺さんの掲示板にこういう詩がはってありました。
   病気になって 気付く 空の青さ 空の高さ 空の広さ
                     直海玄洋師

 ある日、中年の女性が、この人は薬剤師さんでしたが、
この詩を見て感動します。
実はガンの宣告を受けて、悩んでいたのです。
さっそく住職の直海先生にお会いしてお尋ねします。

「私は、余命いくばくもないと宣告されてから、身の回りの
  整理をしましたが、どうしても心の整理がつきません。
  人間、何のために生まれてきたのでしょうか」

すると直海先生が、
「仏法を聞いて、仏の世界に生まれ、仏のさとりを
  得るために生まれてきのです」
 と答えられます。

女性は目の前が明るくなるのを感じました。
それから、彼女は何回も仏法を聞かれましたが、
ついにこの世のご縁が尽きて亡くなられました。
すると、ベッドの下から遺書が見つかりました。

 私は間に合ってよかった。
  みんな、手遅れにならない中に、仏法に遇うておくれ。

 彼女は、自分自身のいのちの行き先をハッキリするという
大仕事をやり遂げ、さらに遺された若い人たちをも、
その人生の行き先に導くという さいごの仕事をされたのでした。

  藤枝宏壽著 「老いて聞くやすらぎへの法話」より 自照社出版


          


           私も一言(伝言板)