第1589回 仕合わせな人生を

 令和5年 7月 13日~

 今でこそ どこの家にも空調が備わっていますが、
30年ほど前までは 扇風機と団扇の時代でした。
お盆のお参りなど、勤行する私の後ろで、ずうっと団扇で
あおいでくださっていたおばちゃんがあったものです。

 それから、しばらくして 冷房だけのエアコンが
付けられるようになりました。
ある冬 寒い朝の月忌参り、玄関で声をかけると、
さっさと二階の仏間に上がってお勤めを開始
慌てて奥さんが飛んで来てエアコンを付けてくださいます。

 ご自分の部屋は、冷暖房のついた空調でしょうが、
仏間は冷房だけの古いタイプ、「もうちょっと待ってくださいね。
もうすぐですから」と、言い訳しながら、リモコンを持ち、
空調の風に手をあてて ゴメンナサイねと声をかけられます。

 この部屋は冷房しかないことを知っている私は、
エアコンを止めてくださいと、手で合図しながらお勤めを続けます。
冷気が真横から いきよいよく吹きつけます。
時間がたつに従って、ますます冷え込んで来ますが
お勤めを止めて、冷房を断る訳にもいかず、
冷凍室のような極寒の中でのお勤めでした。

 お勤めが終わり、ありがとうございます。
ここは 冷房しかないようですからと、断ると
アーそうでしたねと、慌てて、石油ストーブを 運んでくださいました。

その奥さんが、先日97歳でご往生になりました。
家業を手伝いで早朝3時からの働きづめのお母さんでした。
お姑さんが厳しい方でしたから、ご苦労も多かったでしょうが、
これが自分に与えられた仕事と、腰が曲がった姿で
にこにこしながら、はたらいておられた様子を思い出します。

 都合のよいことも、不都合なことでも自分のやれることを
精一杯勤めさせていただく、それが仕合わせであると、
教えていただいたよな、有り難いお念仏の方でした。
こうした有り難い方が 一人また一人お浄土へと生まれて行かれます。

 南無阿弥陀仏 南無阿弥陀仏のお念仏を聞くとき、あの方々が
阿弥陀さまと一緒に 呼びかけていただいていると、
味わい 私もこの世の勤めを、自分で出来ることを
にこにこしながら精一杯、果たしていきたいと思います。

          


           私も一言(伝言板)