第1459回 二艘の船
令和 3年 1月 14日〜
蓮如上人のお言葉に、
仏法は世間の用事を差しおいて聞きなさい。
(蓮如上人御一代記聞書現代語版100頁)
というものがあります。
働き盛りの壮年方々は、社会においても、
家庭においても、最も責任の重いときです。
一番忙しいときでしょう。だから、
「お聴聞するような、そんな暇はない」
と言われそうです。
しかし、蓮如上人はさらに続けて、
世間の用事を終え、ひまな時間をつくって
仏法を聞こうと思うのは、とんでもない
ことである。(同100〜101頁)
と、おっしゃるのです.そして、
仏法においては、明日ということが
あってはならない。
と、諭されました。
おもしろい例え話が、「仏教名言辞典」
(奈良康明編著)にありました。
二艘の船がありました。
一艘の船には錨が海底にまで降りて
いますが、外からは見えません。
も
さて、二艘の船は、凪の日は同じように
静かに揺れています。
少
やはり同じように動揺します。
嵐が来ても同様で、
もてあそばれているのです。
しかし、嵐が静まってみると、
錨のある船はちゃんと元のところに
戻っています。
しかも、揺れている間にも、
「この船は流されない」という
安心感があるのです。
この例え話では、「錨」が
信仰であり依りどころであると言い、
どんなときにも依りどころがある
という自信は毎日を朗らかにする、
と説いています。
働き盛りの壮年は、最も責任が重く、
一番忙しいときでしょう。
だからこそ、仏法のことは明日に
のばすべきではない、と
仰せられたのです。
この『蓮如上人御一代記聞書』の
文章は、「無常迅速の世のなか、
いのちの問題の解決はもっと
もっとも緊急を要する」という、
蓮如上人のお諭しの言葉でした。
社会的にも、家庭的にも、
いろいろと問題を多く抱える
皆さん方こそ、ご聴聞いただきたく
存じます。
人生の折々に 辻本敬順師
本願寺出版社