第1449回 歯医者さんの言葉

 令和 2年11月5日〜

 コロナの影響は予想外のところにも及び、
かかりつけの歯医者さんが、高齢のためも
あり、おやめになりました。


新たな病院を探し始めると、歯医者さんの
看板が次々に眼に入り、その多さに、
日頃見落としていたことに、驚きました。


80歳で20本、自分の歯を残した方が
よいのだとの思いが強く、ぐらぐら揺れる
歯までも、接着剤で丈夫な歯にくっ付けて
もらい、大事大事に残してきました。

 新しい歯医者さん行き、見てもらうと、
「これは抜いた方が良い、根元が腫れて
おり健康にも良くない、周りの歯が
丈夫だから、かぶせた方が良いですね」
と、言われました。


「入れ歯だけは嫌、そうでなければ
お任せします」と、言ったものの 
金属を被せるイメージしかなく、
暗い気持ちになりました。
それを察してか、「前の方の歯
ですから治療中は、仮歯をつくります
心配要りません」とのこと、
麻酔をして丈夫な歯を削り、
悪い歯を、抜きました。


削られた丈夫な歯を舌で触ると、
細いピラミットのように三角に尖った
歯が3本、そこに粘土のような
もので型をとり、10分ほどで
自分の歯以上に立派な真っ白な
仮歯が出来上がり、外見は、
治療中とは思えない出来映えです。


「仮歯」、「被せる」、抱いて
いたイメージとは全く違っており、
いかに専門用語が、一般の人の
理解と大きく食い違っている
かを知りました。


治療の内容を一つ一つ丁寧に
説明していただき、有り難いの
ですが、初めて治療を受ける者には、
専門家の言葉は正確に伝わって
おらず、大きな違いがあるもの
だなあと気づきました。


 ところで、毎日毎日、僧侶として、
お参りしお勤めして、お話しも
ちゃんとして、自分はまともな
住職だと思い込んでいましたが、
聞く方は、まるで違った受け取りを
されていたのだろうと、感じました。


「なんでお勤めをするのか」
「誰のためのお経か」
「何を目的として仏事を行うのか」
毎日の繰り返しで、こちらは
当たり前でも、ご門徒の方の思い、
イメージと大きく異なっている
のだろう、専門用語をできるだけ
使わずに、説明して行く必要が
あると、つくづく感じています。


 そして、歯医者さんは、患者が
不自由なく痛みなく、日常生活が
快適におくれるようにと熱心に
治療されているように、僧侶もまた、
老病死をはじめとした多くの苦しみ
悩みを、乗り越えていける手立て、
向かうべき道を伝えて行く、大事な
役目を果たしているのだと、改めて
味わっています。


毎回、毎回、相手の方は、初めてのこと、
ご門徒が正確に理解出来るよう、
味わえるように、相手の立場に
よりそった言葉を使っていくことが
大事だと痛感しています。


     


           私も一言(伝言板)