第1428回 他力のお育て

令和2年 6月11日〜

深川倫雄和上のご法話にこんなところが
ありました。


 今でこそ、癌という病気は治療方法も
開発され、あまり恐れる必要もなくなって、
本人にも病状を正確に説明し治療をして
いますが、この30年ほど前までは、
患者本人に告知するかしないか、
むずかしく悩み多い問題でした。


 山口県に広兼至道という、若い
四十五歳の僧侶の方が、癌で亡くなられました。


その四年前に精密検査をして癌である
ことを、お医者さんは奥さんに知らせました。


それから二日経って、いつもと変わらず
明るく接する奥さんに

「一昨日お医者様の検査の結果が出ただろう、
 如是我聞というんだからな、お前の
 思いは加えずお医者様の言葉を減らさず、
 聞いた通りを言ってほしい。」

と、そこで覚悟を決めて、奥さんは。
「もうボロボロで、手当ての仕様がない。」
と言われましたと・・・


奥さんの話では、目をバッチリ開けて
聞いていたご主人は、

「そうだったか、あんたは辛かっかね。」
つて、言ったといいます。

お念仏の、他力のお育てをいただいて
いますと、私に問題になるのは、

自分の問題ではなく、私の他である仏様です。

自分が問題なんじやなくて仏様、仏様 
仏様と自分を無にして、仏様を喜ぶ癖が
ついてくる、そこで、癌を告げられた
自分の思いよりも、それを今告げてくれた
妻の思いを、先に気掛ける様に
育てられていたのです。


「お医者様からそれを告げられてから、
 二日間、どう言おうか、言わずに
 おこうか、あんたは、どれ程
 辛かったろうか。」と自分のこと
より奥さんのことを心配して言うた
という、有り難いですね。
   (如来にきく 探求社刊)


 お念仏を喜ぶ人、妙好人・
因幡の源左さんにもこんな言葉が
残っています。


ある方が「歳を取ると気が短くなって、
よく腹が立つようになるものだが、

なんでも堪忍して、こらえて暮らし
なされや」と言うと源左さんは、
「オラはまんだ人さんに堪忍して
 あげたことはござんせんやぁ。

  人さんに堪忍してもらってばかり
 おりますだいな」と、
 よく聞き取れずに問い返すと


源左さんは「ハイ、オラは、人さんに
堪忍してあげたことはないだいなあ。

オラの方が悪いけ、人さんに堪忍して
もらってばっかりおりますだがや」と
答えたのです。


お念仏の人は、自分のことより仏様の
はたらきを味わう力が育ってくるもの。

自分より周りの人々の思いを味わう力が
培われてくるのです。



          


           私も一言(伝言板)