第1374回 供花のこころ

 令和 元年 5月 30日~

 仏さまにお供えする基本的なものに、お仏飯などの食物、灯明、お花、
お香がありますが、そのどれをとっても、私たちの生活になくてはならないものです。
私たちのいのちを育み、潤いをもたらしてくれるものばかりです。


 このうちお花は、私たちのこころをなごませ、すがすがしい気持ちにさせてくれます。
人間は何万年も前から、死者に花を捧げる習慣をもっていたといわれています。
花は人間の文化とくに宗教と密接にかかわっていたのです。


 美しいお花を、心からお敬いする仏さまに、感謝を込めてお供えするのが
供花ですが、『仏説阿弥陀経』には、お浄土の菩薩たちは。

美しい「曼陀羅華」の花びらを、雨のように散らして、あらゆる仏さまを
供養すると説かれています。このように花びらを散らすことを散華といいます。


 ところで、仏壇にお供えしたお供えは、同時に私たちに向けられた、
仏さまのはたらきをあらわすものなのです。
お花を、仏たちのほうに向けて供えるのはそのためです。


 お経には、「お浄土の池には、大きな美しい蓮の花が色とりどりに咲いていて、
青い花は青い光を、白い花は白い光を放っている」と説かれています。
あらゆる「いのち」は、それぞれの持ち味のままで美しく輝いている
のだということを、知らせてくださっているのです。


 とくに蓮華は、泥沼に咲きながら泥にそまらず、それどころか、
泥沼を美しい花園に変えていきます。
仏さまの智慧も、私のみにくい煩悩を、尊い仏さまのお徳に変えてくださるところから、
蓮華を仏さまの象徴として大切にしてきました。


 また、『仏説無量寿経』には、一つひとつの蓮華から、三十六百千億という
無数の光を出し、その一つひとつの光の中から、また三十六百千億の仏さまが現われて、
それぞれ十方の世界に至って阿弥陀仏の本願を説きひろめているといわれています。


 お仏壇にお供えした花を通して、お浄土の花を想い、阿弥陀さまの
ご本願のはたらきを、味わわせていただきましょう。


 では最後に、ご一緒にお念仏申しましょう。南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏……。

                            朗読法話集 第一集より



          


           私も一言(伝言板)