第1344回 つなぐ 受け継ぐ

 平成30年 11月1日〜

 物が豊かになって 数多くの品物が家の中に散在しています。
必要な物だけ残して、あとは捨てようという断捨離が話題になっています。

 ところで、今年は 明治維新から150年たったということで、いろいろな行事が行われ
日曜大河ドラマも 西郷隆盛の物語です。
江戸時代、武士たちは 自分の藩を守り残すために奮闘し、自分の子孫のために
俸禄や名誉を守るために腹をも切り、地主は山に植林し、田畑を肥やすことを続け、
次の時代へと大事に伝え残してきました。


しかし、幕藩体制をなくし、新しい日本を作ろうと、それまでのものを
すべて否定し、投げ捨てて、大きな変革が断行され、明治を迎えました。

 同じように、第二次世界大戦の後も、軍国主義を排除して、民主主義の
新しい時代を作ろうと、大胆な変革が行われました。
その変革の時代に育ってきた世代は、前の時代をすべて否定する教育を受け、
捨てることが進歩であり、受け継ぐこと護ること、伝えていくことの
大切さを、知らされることなく育ってきました。

前の時代のもの、古くなった物は すべて捨てて、新たに作り出すことこそ
進歩であると、教えられ信じこんだままでいます。

 すべてを再スタートさせることより、前の時代を受け継ぎ、それを土台に
変革することこそ、進歩も早いことをあまり知らずにいます。
種を蒔き育てるよりも、挿し木や接ぎ木した方が、早く成長するものがある
ことに気づいていません。
前の時代を全否定して、ゼロからスタートするのではなく、取捨選択して継ぎ足し
育てていくことこそ、文化的な発展だと考えます。

 そして、人間が必ず受けとらねばならない、四苦八苦を力強く乗り越え、
人生をより豊かに味わうことが出来る教えがあることも、否定するのではなく、
その神髄を受け継ぎ、味わいを深めていくことこそ、
喜びの豊かな人生を得ることであり、人類の進歩へとつながるものと思います。

 捨てる、否定するだけではなく、味わい、受け継ぎ、それを土台に再構築する。
時代が変わっても、変わることのない人間の本質を知らせ、
苦悩を乗り切り、豊かな人生を送ることの出来る、お念仏の教えがあることを是非
確認したいものです。

 捨てるだけではなく、受け継ぐこと、伝えること、そこから新しい芽が出ることこそ
大事なことではないか、自分だけではなく、子どもや孫へ残せるもっとも
大切な贈り物だと味わいます。

 お念仏の教えは、先輩たちが残してくださった人間を人間らしく、喜び多く
生きていける仏さまの智慧が説かれた宝もの、捨ててしまうのではなく、
自分自身で味わって、次の時代へと確実につなげ 残していくことこそが、
親の世代の大きな責任ではないでしょうか。

          


           私も一言(伝言板)