第1290回 お育ていただいて

 平成29年 10月19日~

 先輩のご住職と話しておりますと、昔話が出てきました。
若い僧侶は 昔は総代さんや、有り難いお同行にお育ていただいて
一人前の僧侶になったものだと。

自分も、学校を卒業して帰ってくると、「若さん、若さん」と、ことある毎にお寺を
訪ねてくださるお爺ちゃんがあったのだと。
「今日は、○○寺さんでご法座があると聞いたが、若さん忙しいじゃろうなあ。
  連れて行ってもらいたいのじゃがのう」と、誘いに来られる。

車の運転中、「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏、有り難いのう
若さんに乗せてもらってお聴聞、夢のようじゃ、南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏」と
法座があるお寺に着くと、走るように駆けだして、一番前の席に座り、にこにこ笑いながら、
お念仏されていた。


帰りの車の中でも、「有り難いのう。若さんに送ってもらって、お聴聞、
南無阿弥陀仏、有り難いのう」と、お念仏。

近くのお寺で法座が開かれる度に、ご自分の家から近いお寺の場合でも
わざわざお寺まで来て、「つれていってもらえんかのう。忙しいじゃろうになあ、
勉強があろうに、すまんことじゃなあ。南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏」
何度も何度も 送り迎えをしながら、この総代さんに、お聴聞の習慣と
聞く喜びを教えていただいたのだと。

 また、「どうしても分からんのじゃが、若さん教えてくんかなあ。
どうして、南無阿弥陀仏で罪が消えるのじゃろうかなあ」とか。
お法の基本を、いろいろと質問をして、勉強の機会と、やさしく説く、力を
養わせていただいたのだと。

また、ある方は、自分の子どもや、孫たちを集めて、毎月1回、お参りの
ご縁を結んでいただいた総代さんもあった。
父親の住職からよりも、こうした総代さんたちにお育ていただいたように
今は思えると聞きました。

住職が、ご門徒にお取り次ぎし、ご門徒が次の住職をお育てしていく、
浄土真宗は、こうして、お法が伝わってきたのでしょう。
巡番報恩講が開かれると、最前列には そうした有り難いご門徒が、
一団になって、五日間、いつも同じ席に座って、南無阿弥陀仏、
南無阿弥陀仏とお念仏されるお姿がありました。


今 そうゆう有り難い方々が段々と消えていくのは、残念でならないことです。
有り難い住職の近くには、有り難いご門徒が育ち、有り難いご門徒によって
有り難い住職が育っていくのでしょう。

有り難い方とは、何度でも何度でもお聴聞の席に喜んで座ることの出来る方、
南無阿弥陀仏をいつも口にしておられる方々、是非またお目にかかりたいものです。

          


           私も一言(伝言板)