第1709回 おまかせ おまかせ

 令和7年10月30日~

 お寺の坊守さんで 47歳の若さで亡くなった
鈴木(すずき)章子(あやこ)さんという方がおられました。
ガンが見つかって、5年間の闘病生活の後、昭和63年に命終られました。

 鈴木さんは、入院してガンの治療に取り組まれましたが、
限られたいのち前では、世間一般の価値観が通用しなくなることに
気づかれて、「お先真っ暗」となり、ここで、はじめて
「生死」の問題と向き合うことになり、悩んでいた時、
次のような手紙を受け取ります。

 八十歳を過ぎた実家のお父さんからの手紙には、

「あなたは、一体何をドタバタしているのか。
生死はお任せ以外にはないのだ。人知の及ばぬことは
すべてお任せしなさい。
そのためにお寺に生まれさせてもらって、お寺に
嫁いだのではないか。
生死はあなたが考えることではない。
自分でどうにもならぬことをどうにかしようとすることは、
あなたの傲慢である。

ただ事実を大切にひきうけて任せなさい」とありました。
        (『癌告知のあとで』二一頁)

 お父さんの言葉に、誰にも代わってもらえない人生であることに
はっきりと、気づいたと言われています。
仏教は、人生の苦悩を克服するために、煩悩をなくしていくことを
本来は 教えるものです。
しかし、煩悩をなくすことなどとても不可能です。
そこで、心の持ち方を転換し、視点を変えることによって、
少しでも苦悩を克服できる方法があると気づかされ、そのことを、
四人の子供達へ伝えるために たくさんの詩を残しておられます。

その中に『変換』と題する詩には

死にむかって進んでいるのではない 今をもらって生きているのだ
今ゼロであって当然な私が 今生きている
ひき算から足し算の変換 誰が教えてくれたのでしょう
新しい生命
嬉しくて 踊っています “いのち 日々あらたなり”
うーん 分かります

人間の力の及こと、及ばないことがある。
自分で やれるだけやったら 後は お任せすればいいだけ、
間違いなく
 一番良い方向に進んでいくものです。

 後がないと、残された日を、11日 引き算していくのではなく、
毎日毎日を精一杯生き抜くだけ、いのち終わってもすべてが
終わりではなく、
 まだまだお浄土で はたらくことのできる 
未来があるのです。

大きな 確かな あしたがあるのです。 


  

          


           私も一言(伝言板)