第1587回 人は 誰しも いつかは

 令和 5年6月29日~

 コロナの前まで、月に一回「浄土真宗の常識 勉強会」を
開いていました。沢山の方にお参りいただいていましたが、
この3年間はお休みし、今では、老人施設に入られた方や、
お亡くなりになった参加者の方もあります。

坊守さんが作る 毎回違った 手作りおやつが楽しみと
言われながら続けていました。


 先日、その参加者の親戚の方から電話がありました。
参加していたお母さんではなく、その息子さん71歳が お亡くなりに
なったとのこと、息子さんのお宅は知らず、慌てました。
お母さんは老人施設に入られ、お寺からの連絡の葉書や手紙は、
息子さんのところへ住所変更になっていたことを思い出し、駆けつけました。

 肺癌の告知を受けてからも、8年間 仕事を続けながら
病気と闘っておられたとのこと、ご本山で おカミソリを受け
ご夫婦で 法名を受けられたことは聞いていましたが、
病気のことは内緒にされていたとのことでした。

 一人息子だったご本人は、自分が癌になったことを、母親が知れば
どれだけ悩み苦しむか、絶対、親にだけは知らせたくない、
頭髪が抜ける治療は避けてほしいと、頼まれていたそうです。

 通夜、お葬式、初七日が済み、二七日の席で、喪主の奥様から
こんな本を残しています、よろしければ読んでくださいと、
160頁ほどにまとめられた癌告知からの8年近くの治療の内容や
さまざまなエピソードが、克明に記録された立派な本をいただきました。

 その記録を読ませていただくと、癌告知から2年ほどたって、
母に病気のことを内緒にしておくと、もしもの時、家族がきっと
責められるだろうと、母親あての手紙を書き残していたとのこと。

4年ほど経った頃、一人住まいだったお母さんが自宅で転倒、
救急車で運ばれ、今後は老人施設がいいだろうと
医者に勧められ、介護施設に入所されたものの、毎日荷物をまとめて
自宅に帰りたいと言い、面会した息子さんは声を荒げることも
あったといいます。

 ついに母親に、自分が癌であることを告げたところ、
お母さんは「人は誰しもいつかは死を迎えることとなる、
最後は痛くないようにしなさいよ」との返事に
話の内容を理解出来ていないのか、はたまた90歳を過ぎた
老人の卓越した心情なのかと、困惑したと書かれています。

 息子さんは、母親が認知症で正確に理解出来ていないと受け取られた
ようですが、毎月、毎月、仏さまのお話、老病死は避けられないと、
聞いて来た人の言葉だったのだろうと、有り難たく感じました。
仏教の話を聞くことがなかった息子さんには、それが理解出来なかった
ようです。

 そして、息子さんが数日後、自分の病状を再び話しても、反応が乏しく、
「風邪をひかないように」と、言うだけだったと書かれています。
親としてはどうしてやることも出来ない、悩み苦しみながらも

四苦八苦を受け入れることが出来る人と、仏縁のなかった息子さんとの
違いだろうと思われます。

 仏教は 死んでからの話ではなく、生きている間に聞いておくべきもの、
この息子さんに、お聴聞するご縁がなかったことが お聴聞を勧めることが
出来なかったことが、誠に残念でなりません。
ほんの数回でも良いから 仏さまのお話、お浄土のお話、聞いておられたら、
また違った味わい深い闘病生活になっただろうにと、残念に思いながら
癌告知後の揺れ動く心を、読ませていただきました。

          


           私も一言(伝言板)