第1481回 お寺の近くに 
     
  ~親の想いを受け継いだ 土井マサヱさんの思い出 ~

 令和3年 6月17日~

  音楽の先生と結婚され、台湾にお住まいでしたが、
終戦を迎えお子さんを連れ引き上げてこられたとのこと。


里の父親は、大事な一人息子を戦争で亡くし悲嘆し、
せめて娘達は、近くに住まわせたいと、お寺のすぐ横の
田んぼを埋め立て、三人の娘たちに住まわせました。


 土井さんは長女で、次女は禅宗の家に、三女は
近くのお寺のご門徒でした。

長女の土井さんは、禅宗の妹さんを伴って、
仏教婦人会に入り、法座には揃って必ず着く仲良し姉妹でした。


巡番報恩講の時など、お寺の台所だけではなく
数メートルしか離れていない土井さんの台所も使って、
御斎づくりもをし、法中部屋などを広く使うために、
不要な机やイスなども、運び込ませていただいいました。


  住職継職法要が近づいてきたとき、記念の品をと、
冬と夏の五条袈裟をあつらえていただきました。
前住職と相談の上だったのでしょうが、そこには、
継職記念と年月日が刺繍されておりました。


父親が自分たちを、お寺にすぐ横に住まわせてくれたお陰で、
お念仏のご縁いただいた、その喜びを一人でも多くの人に
伝えてほしいとの願いだったのでしょう。
後で、お子さんに伺うと、早朝起き出して、ビル清掃の
アルバイトをして五条袈裟の費用を工面していただいたと
聞きました。


 本山と同じ時間にご晨朝をはじめたとき、毎朝お参りいただく
メンバーでもありました。
亡くなられる直前、報恩講をお勤めしたいとの連絡があり、
お寺のすぐ横のご自宅で、頂戴した五条袈裟を付け、三人姉そろって
お勤めし、お念仏のお話を聞いていただきました。

「どうか 後たのみます、よろしくお願いしますと」何度も、
何度もおっしゃっていましたのが、それが最後となりました。


  お子さんは、壮年会に入り、いろいろの行事には、
必ず手伝っていただき、間違いなく、お念仏を受け継いで
おられます。

毎月一回開くお寺の「男の料理教室」のメンバーでもあります。
親の姿を見て子は育つもの、そして伝わっていくものだと、
つくづく感じています。

          


           私も一言(伝言板)