第1402回 「なも」 か 「なむ」 か

 令和元年12月12日~

 浄土真宗本願寺派では、「南無阿弥陀仏」の「南無」を、
「ナム」ではなく「ナモ」と発音します。
一般的には「ナム」と発音する方が多いように思われますが、
なぜ本願寺派では「ナモ」と発音するのでしょうか?


本願寺派で「南無」を「ナモ」と読むのは、もとをたどれば、
宗祖親鸞聖人の読み方に由来しているようです。
といっても、実は親鸞聖人は「南無」ではなく、すべて
「南无」と書かれており、「南無」という表記は、
聖人の著作には見当たらないといいます。


また著作のみならず、親鸞聖人のお書きになられたお名号にも、
すべて「無」ではなく「无」の字が用いられていのです。
南无阿弥陀仏と。


親鸞聖人が「南无」とお書きになられたもののうち、
振り仮名が付されているものは十七例発見されており、
このうち「ナモ」と仮名がふってあるのが十五例、
「ナム」との仮名づけは 二例だけだといいます。


ここに、「ナモ」と読まれた例を少しあげましょう。
南无不可思議光(ナモフカシキクワウ)専修寺蔵『浄土和讃』

帰命ハ南无(ナモ)ナリ 法雲寺旧蔵『尊号真像銘文』

南无(ナモ)阿弥陀仏 往生之業 念仏為本
            専修寺蔵『尊号真像銘文』

などがあるようです。

親鸞聖人の「南无」の読み方は、本願寺歴代の宗主にも
受け継がれていて 歴代宗主の主要な書写聖教や著作を
うかがうと、「南无」はすべて「ナモ」と読まれています。
また、平安時代末期の漢和辞典『類聚名義抄』の「无」の項に、
「南无」の読み方を「ナモ」と示されています。

        季刊せいてん116号参照



          


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