第1323回 断捨離

平成30年 6月7日〜

 終活とか断捨離とか、人生の終わりが近づくにあったって、身の周りを
整理しておくことが話題になっています。

しかし、慣れ親しんだものや関係を「捨てる」ということはなかなか
難しいものです。

 有り余るものや情報、煩雑な関係など、不要なものを断ち切り、捨て、
離れることで、身の回りや心を整理して、自分の生き方を見直して

みようということでしょうが、インドのヨガの考え方に基づいて
いるようです。

仏教でも、「煩悩を断ずる」、「ものを喜捨(布施)する」、「執着を離れる」
などと、「捨てる・断つ」ということは大切なこととされてきました。

 ところで、外国に留学した人に聞くと、何でも捨てようとする日本人を奇異に
見られていたといいます。食べること生活することで精一杯の国々の人にとっては
捨てる余裕はなく、ものが豊かで贅沢な人たちの発想だというのです。

 断捨離という言葉が流行するなかで、何でも捨てることのメリットが
聞かれる反面、失敗した例も多く聞かれます。
中には、大切な人間関係までも、無駄なもの、やっかいなものとして
断ってしまっているケースがあるようです。
親子の関係、親戚兄弟の関係など、迷惑をかけたくないと、だんだんと
疎遠になってきているようにも感じます。

そして、人生を終わる葬儀や、仏教的なご縁を結ぶ貴重な年回法要などまで
限られた少人数で行うことが、良いことのような風潮があるのは
まことに残念なことです。

 捨てることが目的ではなく、その前に持っているものを
ちゃんと見直すことが大事なのではないか。
特に浄土真宗のお念仏の教えは、捨てるのではなく残すことではないかと感じます。
子どもや孫へ伝え残していくこと、そのためには何をすれば良いのか。

 念仏の人を必ず救う 決して捨てることはないという阿弥陀さまの願いを
聞き取り、捨てようとしても捨てきれない煩悩を持って生きている自分であることに
気づかせていただくことであり、いのち終わっても仏となって働き続けておられる
多くの先輩があることを味わうこと、そして私もやがて仏となって活躍できる、
すばらしい明日が、限りない未来があることを気づかせていただくこと、

それがお念仏の教えだからです。

 身の回りのものを、見直し本当に大事なものを見極め、見つめ直し、
人間として、親として、残しておくべきものを、伝えていくべきものを
知るために点検し、すべてのものを無駄にしないこと、
周りのものの有り難さを気づくことが重要であると思います。

そして、最も大切なものの一つが 人生の味わいを一層深めさせていただき
生きる意味、喜びをはっきりと教えていただく、お念仏の教え、南無阿弥陀仏であると
確認し、私のことをどうしても捨てることが出来ないという、阿弥陀如来の願いを
味わい伝え残していくことが最も重要だと思います。


          


           私も一言(伝言板)