前立腺肥大症
 前立腺肥大症とは
   前立腺の尿道近くのtransition zoneから前立腺結節が発生、増大するという、高齢男性に多い疾患。前立腺肥大腺腫が加齢につれ増大することが解剖や手術での検討で明らかになった。このことは疫学的にも指摘されている。
  Berry (USA)によると1000例以上の解剖例における組織検査の結果、前立腺結節が40歳代で20%、50歳代で40%、60歳代で70%、70歳代で80%に発見されている。

 前立腺肥大症の症状

初期
頻尿(排尿の間隔が短くなること、1回の排尿量が少ないこと。つまり、膀胱に少しでも尿がたまると排尿したくなる。)

夜間頻尿
夜就寝後に何度もトイレに行きたくなること、時には1時間ごとに行く。

中期
排尿困難
  (尿がなかなかでない。トイレに立ってすぐ尿がでない。尿の勢いがない。)
残尿感
  (尿が残ったような気がする、実際に残尿が出現する。)

末期
尿閉
 ( 尿がでなくなり、膀胱内に尿が充満すること。下腹が膨れてとても苦しい。)
 l993年、国際学会で前立腺症状評価表IPSS(INTERNATIONAL PROSTATIC SYMPTOM SCORE)が作成された。症状を排尿相と蓄尿相に分け,それぞれ7項目につき5段階で表示し、さらにその時点の状態がそのまま続くとしたら生活にどう支障を与えるかのQOL評価も勘案したシステムである

 前立腺肥大症の診断と検査
 直腸診による前立腺触診digitaI rectal examination(通 称DRE)が必要であり、肛門からの指挿入によって、大きさ、堅さ、しこり、圧痛、不整,非対称性などの所見がわかるので、前立腺炎、前立腺癌との鑑別 診断ができる。

 前立腺の大きさを調べる検査

画像診断として
逆行性尿道造影、腹部エコー、経直腸超音波検査

排尿異常の診断・検査
尿路水力学的検査
残尿測定
尿流量測定
治療:いろんな方法がありますが、それぞれ長所と短所がありますので、主治医と相談し、その人に応じた最適な方法を選ぶことが肝要です。
 前立腺肥大症の治療(薬)

症状を軽減する

植物エキス剤:エビプロスタット、パラプロスト、 セルニルトン:症状を緩和する作用があり、夜間頻尿・残尿感・切迫尿意などを軽減し、時には症状が消失するほどの効果 もあります。前立腺そのものを小さくするほどの効果は少ない。副作用が少なく、使いやすい薬です。

漢方薬:八味地黄丸、牛車腎気丸 :上記の薬物のように症状を緩和します。症例によっては非常に効果 があります。量が多いのが飲みにくいこともあります。


交感神経抑制剤(α-ブロッカー):ミニプレス、ハルナール、 フリバス、デアタントール :膀胱の出口が前立腺によって塞がれて狭くなっているので尿がでにくいが、ここを広げる作用があります。排尿効率がよくなり、尿の勢いがよくなります。全身の血管も広げるので血圧が低下するため、起立性低血圧を生じ立ち上がるときふらふらすることがあります。


女性ホルモン剤:プロスタール、パーセリン:前立腺そのものを少し小さくする作用があります。副作用があり、女性化し、勃起障害になることがあります。食欲がでてくることで太り、心臓に負担がくることもあります。

 前立腺肥大症の治療(当院での保存療法:手術しないで治療すること)

 

高温度治療
(高周波による)
尿道または直腸に挿入した器具から高周波を出し、電子レンジのように前立腺を50-70度に1時間位 熱して治療する。1-2ヵ月後に前立腺が縮小し、症状が軽減する。1回25万円ですが、保険適応があります。いまりクリニックでは施行時に痛くないように仙骨麻酔を行っています。入院でも外来でも可能です。。 高周波を出す細い管を尿道から膀胱内まで挿入する時が痛いので、人によっては麻酔を使用します。
当院ではオリンパス社製エンドサームUMW-1を使用して、平成10年度から平成13年夏までに約200数人に治療をしております。そのうち約100人の前立腺肥大症における効果 を検討すると、客観的な改善もある程度ありましたが、自覚症状の改善特に頻尿・夜間頻尿にはかなり効果 的でした。

尿道カテーテル
(バルーンカテーテル)
前立腺肥大症が進行して膀胱の出口が塞がれ、いよいよ尿がでなくなった場合、狭くなった尿道を通 して膀胱の中に管(カテーテル)を挿入し、尿を出すことです。尿道カテーテルは2-4週間で交換します。カテーテルをしたまま風呂に入ることもでき、普通 とあまり変わらない生活を送れます。 しかし、長期間の留置は結石形成しやすくなり、膀胱炎を生じることになります。

レーザー治療
尿道内に挿入した内視鏡カメラからレーザー光線を前立腺に照射して前立腺を焼き、蒸散させて肥大症を縮小させるものです。手術とことなり出血がほとんどなく、短時間ですみますが、痛みがありますので、麻酔が必要です。レーザー光線を導く光ファイバーに数種類ありますが、効果 は同様です。手術より手軽で、効果は手術と同等かそれ以下ですが、手術が受けられないような人(重い心臓病・肺機能低下・出血しやすい人など)にも可能です。。

超音波治療
超音波を前立腺に当てて前立腺の内部を高温度化して肥大症を治療するものです。当院ではまだ行っておりません。

 

尿道ステント

 
前立腺部の尿道に2-6cmの短い管を挿入し、狭くなった尿道を広げて排尿を改善するものです。数種類のステントがあります。尿道カテーテルのように体の外に出ていません。また交換の必要もありません。ステントの挿入には技術的には困難は少ないのですが、その後微妙に移動することが多いので、適切な位 置に挿入することが難しい場合もあります。
  前立腺肥大症の治療(手術療法)

経尿道的手術
内視鏡カメラを尿道から挿入して、肥大した前立腺を切除する方法。少しずつ切除するので、その間出血があります。あまり大きな肥大症には無理があります。一般 に肥大した前立腺が50グラム以下の場合にこの方法を行います。

開腹手術
下腹を切開し、膀胱を開いて前立腺を摘出します。大きな前立腺に向いています。一般 に肥大した前立腺が50グラム以上の場合にこの方法を行います。当院での最大は150グラムです。手術後は1-2週間膀胱内に管(カテーテル)を挿入しております。当院では手術後2-3日間は麻酔を連続して行い、無痛状態を目指しております。手術後に痛みがなくなることで、血圧などが安定し、術後の出血やトラブルが非常に少なくなります。
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