膀胱癌(腎盂癌・尿管癌)/泌尿器科いまりクリニック、佐賀県伊万里市

腎盂癌・尿管癌・膀胱癌とは

尿が腎臓でできて流れる通り道(尿路)から発生する癌です。尿路の移行上皮が腎盂・尿管・膀胱ともに同じなので、同じ種類の癌が発生します。そこで、治療法などもだいたい同じです。

男性に多い疾患で、原因としてはいろいろな因子があるといわれていますが、たばこははっきりと原因のひとつとされています。以前から膀胱癌発生の男女比は10:1ですがこの比は男女の喫煙率の比と同じのようです。最近は若い女性の喫煙が増えていますので、いずれその方々のなかでたくさんの方が膀胱癌になり、泌尿器科においでになるのではないでしょうか。今すぐにでも禁煙をしていただきたいものです。

膀胱癌患者が自主的に作った非常に素晴らしいHPがあります。英語ですが、参考になると存じます。Bladder Cancer Webcafe  http://blcwebcafe.org/

それを翻訳した日本人の方のHPも有ります。ガンファイターさん http://melit.jp/index.html の中にあります

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 膀胱癌の症状
初期

血尿:痛みもなにもないのに尿に血が混じるといういわゆる無症候性血尿。

頻尿(排尿の間隔が短くなること、1回の排尿量が少ないこと。つまり、膀胱に少しでも尿がたまると排尿したくなる。)

夜間頻尿
夜就寝後に何度もトイレに行きたくなること、時には1時間ごとに行く。
中期
上記の症状が頻繁になる
末期
膀胱出血:尿がでなくなり、膀胱内に血液と尿が充満すること。下腹が膨れてとても苦しい。

癌の転移や浸潤による痛み:全身の骨やリンパ節などに転移し、癌性疼痛・貧血を生じます。

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膀胱癌の診断と検査

検尿・尿沈査・尿細胞診:尿中の血液や癌細胞の有無を調べます。

尿中NMP22 :核マトリックスプロテイン22(NMP22):核マトリックス蛋白質(Nuclear Matrix Protein)を免疫原として作成された2種類のモノクローナル抗体302-22と302-18によって認識される核蛋白質で、尿路上皮癌で増加します。

内視鏡検査:膀胱ファイバースコープで観察します。この検査は男性にはかなり苦痛なので、キシロカインジェリーによる尿道麻酔、消炎鎮痛坐薬や仙骨麻酔などを行って実施します。

画像診断として:経静脈性腎盂造影、腹部超音波検査、CT、MRI

膀胱生検と病理組織検査:尿道から膀胱まで内視鏡を挿入し腫瘍のごく一部を採取し、それを顕微鏡で調べるという検査です。この検査は痛みや出血を伴います。そこで、泌尿器科いまりクリニックでは痛くないように麻酔を行って検査をしております。標本採取して、約1週間後に結果 が出ます。この検査によって診断が確定します。膀胱癌はほとんどが移行上皮癌です。ごく一部が扁平上皮癌、腺癌です。悪性度はG1、G2、G3有り、G3が最悪です。予後は悪性度が多い(高い)ほど、不良となります。

膀胱癌の特徴として、浅い癌(表在性)が多く、再発が多いことです。そこで、早めに発見して、早めに切除などの治療を行えば、完治することが多いようです。

尿管癌は尿管の壁が薄いので、膀胱癌に比べて外へ浸潤しやすく、転移もしやすいので、予後は比較的不良です。

 告知について:泌尿器科いまりクリニックでは患者さんに検査前に希望をお聞きしております。すなわち、事前に患者さん本人が告知を希望され、家族も同意された場合には検査結果 をありのままに報告します。患者さん自身があまり本当のことを聞きたくない場合には家族にのみ結果を報告して、患者さんには報告しません。しかしこの場合でも適切な治療は開始しております。

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 膀胱癌の大きさや進行具合を調べる検査

画像診断として

経静脈性腎盂造影、腹部超音波検査、膀胱造影、膀胱多重造影、CT、MRI、骨盤内血管(動脈・静脈)造影、

膀胱造影・膀胱多重造影:膀胱の中に細い管を挿入し、そこから造影剤を注入するものです。膀胱の膨れ具合から腫瘍の進行度や腫瘍の大きさなどが判ります。

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 膀胱癌の治療

薬物治療(癌化学療法)

膀胱癌の多くは根が浅い(表在性)ので、膀胱内に高濃度の抗ガン剤やBCGワクチンを注入することで、かなりの効果が有り、多くの方の膀胱癌が消失します。

根が深い(深在性)癌や転移などのある癌には抗ガン剤の全身投与を行います。ある程度の効果があります。

抗癌剤の全身化学療法:M-VAC療法、GC療法があり、同等の効果がありますが、後者の方が副作用が少ないので、最近は後者の治療が多くなっているようです。以下にVon der Masseによる両者の比較研究報告があります。(日本イーラーリリー社の報告から引用。)

M-VAC療法:メトトレキサート・ビンブラスチン・ドキソルビシン・シスプラチン併用、初日にメトトレキサート30mg/m2、2日目にビンブラスチン3mg/m2、ドキソルビシン30mg/m2、シスプラチン70mg/m2を行い、15日目と22日目にメトトレキサート30mg/m2、ビンブラスチン3mg/m2を行う。これを1コースとして、数コース繰り返すものです。

GC療法:ジェムザール+シスプラチン併用、初日にジェムザール1000mg/m2、2日目にシスプラチン70mg/m2、8日目と15日目にジェムザール1000mg/m2を行うものです。

患者の平均年齢63歳、男320人、女85人を対象とした。追跡期間を2年とした生存期間の解析において、405例を対象とした生存期間の中央値は、GC群で12.8ヵ月(95%信頼区間:12.0〜15.3ヵ月)、M-VAC群で14.8ヵ月(95%信頼区間:13.2〜17.2ヵ月)でした。ハザード比は1.08(95%信頼区間:0.84〜1.40)であり、両群の差は統計学的に有意ではありませんでした。また、1年生存率はGC群で56.9%、M-VAC群で62.4%でした。

追跡期間を5年とした生存期間の解析において、生存期間の中央値は、GC群で14.0ヵ月(95%信頼区間:12.3〜15.5ヵ月)、M-VAC群で15.2ヵ月(95% 信頼区間:13.2〜17.3ヵ月)でした。ハザード比は1.09(95%信頼区間:0.88〜1.34)であり、両群の差は統計学的に有意ではありませんでした。

C群は、奏効率49.4%(81/164、95% 信頼区間:41.7〜57.1%)で、M-VAC群は奏効率は45.7%(69/151、95%信頼区間:37.7〜53.7%)でした。両群の奏効率の差は統計学的に有意ではありませんでした(χ2検定)。

GC療法ではCR12.2%、PR37.2%、SD33.5%、PD11.0%、NE6.1%でした。M-VAC療法ではCR11.9%、PR33.8%、SD32.5%、PD16.6%、NE5.2%でした。CR:腫瘍消失、PR:腫瘍縮小、SD:腫瘍不変、PD:癌進行、NE:効果無し

放射線治療
膀胱に体外から照射する方法があります。最初から治療の第一選択となることもあります。

手術

(経尿道的膀胱腫瘍切除)

(膀胱摘出と尿路変更術または代用膀胱)

経尿道的膀胱腫瘍切除:多くの膀胱癌は根が浅い癌(表在性)ですので、内視鏡カメラを尿道から膀胱内に挿入して電気で切除し、止血します。これで根治ができます。膀胱癌は再発が多いのですが、その都度この方法で膀胱癌を切除し治療できます。膀胱癌の再発は膀胱内の別の部位(異所再発)からよく起きます。そこでこの方法がとても有効です。

根治的膀胱全摘出術:上記の方法では根治できないような進行した膀胱癌では、膀胱・前立腺を一度に摘出し、さらに骨盤内リンパ節摘出(廓清)術を行います。膀胱がなくなるので代わりの排出路か代用膀胱を作ります。代わりの排出路を作ることはおなかの皮膚に穴をあけてそこに腸管を縫いつけて尿を出すことです。この方法はやはり誰でもいやがる方法ですので、なるべく膀胱全摘出術をしないようにがんばります。そのために経尿道的膀胱腫瘍切除をできるように抗ガン剤や放射線治療で膀胱癌を小さくしてから手術したり、膀胱を一部のみ切除するという部分切除術が盛んに行われています。

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