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「励ましの言葉」
からつ医療福祉センター 副院長 渡邊ひさ子
今年の春は日本全体がいつもの年とは違っていた。
もうすぐ訪れる夏も、多分いつもとは違うものになるに違いない。
この3月11日に東北大地震という今まで世界中で経験したことのない大災害が起こった。
マグニチュード9というとてつもない巨大地震が発生し、その直後に大きな津波が何回も、それも
10メートルを超えるような大津波が東北の太平洋側を襲った。
一瞬にして、すべての日常が破壊されてしまった。
予期していないことが突然起こったこと、さらに経験と英知を尽くして作られていた防災対策であったが、
それをはるかに越えた大きな規模の地震や津波が起こったことに私たちは驚愕した。
追い打ちをかけるように、地震や津波に耐え得るような基準で建設されたはずの原子力発電所で、電源が作動しなくなり
大きな事故が起こった。放射能汚染の危険性のある発電所周囲の人々は住み慣れた自分の家を離れなければならなくなり、
こんなことになるとは誰も想像もしていなかった。
地震、津波、放射能で日本中が大きな痛手を受け、経済はもちろん、教育、医療、福祉などいろいろな分野に影響が出てきている。
私たちの最も大きな関心事である福祉については、障害者自立支援法の廃止が宣言され、それに代わる新法(仮称、総合福祉法)
が、平成24年8月に施行されることが決定されており、新法施行までの間、障害者自立支援法とほぼ同様の内容であるが改正障害者
自立支援法(いわゆるつなぎ法)が議員立法として国会に提出され、平成22年12月3日に成立し、12月10日に公布されたことは
周知のとおりである。
今回の大震災で、その流れや内容にどんな影響が出るのか気がかりである。
知的障害者、精神障害者への支援や児童に関してどのような検討がなされていくのか正確で詳細な情報が待たれるところである。
ところで震災から1ヶ月以上たったというのに、まだ行方の知れない人が1万人以上もいるそうである。
難病のこどもたちや高齢者や障害者はどうであろうか。うまく難を逃れたであろうか。
特に重度の身体障害者や重症心身障害児はどのような生活をされているのか心配である。
外国のメデイアで「日本人の被災者は家族や財産すべてを失ったが、ただひとつ人間の尊厳は失わなかった。」という報道は
印象的であった。
また、ある雑誌のインタビューの記事で、家や物をなくした人に「援助したいと思っていますが、今何が欲しいですか。」と聞かれて、
心の中は「津波や地震でなくした家や物をすべて返して欲しい。」と言いたいのに「お茶とふりかけ」としか答えることが出来ず、
とてもつらい悲しい気持ちになったと書かれていた。
大切な家族やすべてを失った人たちに「ガンバッテ」と言うのは心からの励ましのつもりであっても、言われた側は
「こんな状態で何を頑張ればよいのかわからない。具体的に体験談とか避難所で夜泣きをするこどもへの対応の仕方など
何か役に立つ方法をひとつでも良いから言ってくれる方が有り難い。」というような記事もあった。
人と人のコミュニケーションは難しい。
障害を持っている人、病気の人、苦しみや悩みを持っている人に接する時にも充分心得なければならない事だと考えさせられた。
共に生きるというのは特等席の状態から相手をいたわるのではなく、悲しみや苦しみを分かち合う気持ちが大切であるというのは
誰でもわかっているはずであるが、ついつい気軽に「ガンバレ」と言ってしまいがちである。
相手の気持ちを思いやり、心を込めてもなお、気持ちが伝わらないことがある。
励ましの言葉は相手の立場に立っての言葉でなければ、真の「励まし」にはならない。