第1053回 過去 現在 未来  〜自分を見失った姿〜

 平成25年 3月28日〜


こんな話を 法座で聞きました。
幽霊には 三つの特徴があるというお話です。

いわゆる幽霊画や怪談映画などに出てくる幽霊を思い起こすと、
そこには共通したいくつかの特徴を見つけだすことができます。

手を前に出して、垂らしているのも大きな特徴の一つです。

幽霊のまねをしてみなさいといわれたら、おそらく誰もが
このおなじみのポーズをとるのではないでしょうか。
そして 細く震える声で「恨めしやー」と・・・・・。

二つ目の特徴は 髪の毛が長いということです。

特に後ろに髪が長いのです。
あまり短髪角刈りの幽霊というものを聞いたことがありません。

そして三つ目の特徴は足が描かれていないということです。
だいたい幽霊はふわりと浮遊していて、歩き回ったりしないようです。
このように、後ろ髪が長く、両手が前に垂れていて、足が描かれて
いないということが幽霊の特徴として考えられます。

そしてこれらの特徴には一つひとつ意味があるそうです。
例えば、髪が後ろに長いという特徴は、後ろにひっぱられる様を
表しています。

後ろというのは時間的に後ろということで、過去のこと、

今より昔を意味しています。よく後ろ髪ひかれるということを
いいますが、髪が後ろに長いというのは、既に過ぎ去ってしまった昔、
過去のことにとらわれ、そこから離れられない状態を表しています。

私たちは年をとるにつれて、「ああ昔はよかった」「あの頃が懐かしい」と
口にすることが多くなります。
人によってはもっと強く過去の栄光にすがるということもあります。
過去を追い求めているということでしょう。

次に両手を前にだらりと垂らしているというのは、姿勢が前のめりに
なっているわけで、今度は時間的に前、つまり未来にこころ奪われる様を
表しています。

未来は 誰にとっても いつも不確かなものです。
たとえどんなに過去から学んで未来に備え対処しても、予想を超えた

出来事はつねに起こります。

だから先の見えない将来は不安で常に心配がつきまとうわけです。
この先どうなるのだろうかという不安はつきまとうものです。

人は 苦しい時ほど過去を追い、未来に怯(おび)え
そして自分の足元が見えなくなります。

これがまさに幽霊の三つ目の特徴、足が描かれていない理由でしょう。

さて、このように過去にとらわれ、未来に迷い、そして自分の現在の姿を
見失っているのが幽霊の姿です。
そうすると、幽霊とは誰のことかというと、そうです、それは

ほかでもないこの私自身の姿だということに気付かされます。


朝、顔を洗うときによく鏡を見て下さい。
そこに幽霊がいるのです。


親鸞聖人は 阿弥陀仏は念仏ひとつで、この幽霊のような私たち凡夫を
仏にまで育てて下さることを明らかにされました。
不可思議なことです。

(本願寺新報 杉岡孝紀師「幽霊には三つの特徴」を借用
  勝手にアレンジさせていただきました。) 

南無阿弥陀仏と ともに生きる生活は、今 ちゃんと地に足をつけ

南無阿弥陀仏に導かれ、お浄土への道を 一歩一歩歩いていく
生活を いただくことです。

妙念寺電話サービス 次回は 44日に新しい内容に変わります。

 

         


           私も一言(伝言板)