3.身体拘束廃止に向けての基本指針
1)身体拘束の定義
医療サービスの提供にあたって、患者さんの身体を拘束しその行動を抑制する行為とします。
身体的拘束その他、入院患者さんの行動を制限する具体的行為にあたるものとして
厚生労働省が「身体拘束ゼロへの手引き」の中であげている行為を次に示します。
1. 徘徊しないように、車いすや椅子・ベッドに体幹や四肢をひも等でしばる。
2. 転落しないように、ベッドに体幹や四肢をひも等でしばる。
3. 自分で降りられないように、ベッドを4点柵で囲み柵をすべてひも等でしばる。
4. 点滴・経管栄養等のチューブを抜かないように、四肢をひも等でしばる。
5. 点滴・経管栄養等のチューブを抜かないように、また皮膚をかきむしらないように、
手指の機能を制限するミトン型の手袋等をつける。
6. 車いす・椅子からずり落ちたり立ち上がったりしないように、Y字型抑制帯や腰ベルト、
車いすテーブルをつける。
7. 立ち上がる能力のある人の立ち上がりを妨げるような椅子を使用する。
8. 脱衣やオムツ外しを制限する為に、介護衣(つなぎ服)を着せる。
9. 他人への迷惑行為を防ぐ為に、ベッド等に体幹や四肢をひも等でしばる。
10. 離床センサーやセンサーマット等を使用する。
11. 行動を落ち着かせる為に、向精神薬を過剰に服用させる。その際は以下を注意する。
1.目的と副作用について、患者本人又は家族に説明し同意を取る。
2.投与後は要観察を行い、歩行障害、嚥下障害、過鎮静などの副作用が生じた
場合は主治医へ速やかに報告し、再検討を行う。
観察ポイント
日中の過ごし方の変化、パーキンソン病状の有無、夜間の睡眠状態、
転倒リスク、食事摂取状況、昼間の覚醒状態や眠気の程度
3.副作用の有無の確認
抗精神病薬:幻覚・妄想、焦燥性興奮、暴力に使用することが多い薬剤。低用量で開始し症状を見ながら調整していくこと。主な副作用は眠気・ふらっき・過鎮静・嚥下障害。
抗うつ薬 :かかりつけ医の為のBPSDに対する向精神薬使用ガイドラインでは抑うつ状態 に対してSSRIやSNRIの使用を考慮してもよいとの記載がある。基本的な使 用法は抗精神病薬と同様。主な副作用はてんかん発作閾値の低下、緑内障の悪化、心血管疾患の悪化。NSAlDsや抗血小板薬との併用は頭蓋内出血のリスクを上昇させるため、注意を要する。
抗不安薬 :現在使用されている抗不安薬のほとんどがべンゾジアゼピン系抗不安薬であるが、副作用が発現しやすいため、75歳以上の高齢者や中等度以上の認知症患者に対しての使用は推奨しない。 使用前には十分な検討を行い、使用するときは一時的な使用にし、長期もしくは 定期の使用は避ける。
睡眠薬 :ペンゾジアゼピン系睡眠薬が広く使用されてきたが、高齢者では副作用が出現しやすいため、安易な導入は避ける。非ペンゾジアゼピン系睡眠薬についてもべンゾジアゼピン同様の副作用があるため、使用するときは少量投与にとどめ、漫然と使用しない
当院に鎮静作用のある薬品一覧
2)やむを得ず身体拘束を行う場合
患者さんまたは他の患者さんの生命又は身体を保護するための措置として、以下の3つ
の要素の全てを満たす状態にある場合は、患者さん・ご家族への説明同意を得た上で例外的に 必要最低限の身体拘束を行うことがあります。
1 切迫性;患者さん又は他の患者さんの生命又は身体を危険にさらさないこと。
2 非代替性;身体拘束その他の行動制限を行う以外に代替法がないこと。
3 一時性;身体拘束その他の行動制限が一時的なものであること。
3)身体拘束禁止の対象としない具体的な行為
当院では、肢体不自由や体幹機能障害があり残存機能を活かすことができるよう、安定した体位を保持するための工夫として実施する行為については、身体拘束等禁止の行為の対象とはしないこともあります。(複数人で検討した上で目的を明確にして、看護記録に記録します)
1. 整形外科治療等で用いるシーネ固定等
2. 転落防止のための4点柵使用
3. 点滴時のシーネ固定
4. 自力座位を保持できない場合の車いすベルト
5. 身体拘束をせずに患者を転倒や離院などからのリスクから守る事故防止対策
(離床センサー等)
4)身体拘束を行う場合の対応
緊急・やむを得ず身体拘束を行う場合は、医師をはじめ身体拘束適正化委員を中心に十分な観察を行うとともに経過記録を行い、できるだけ早期に拘束を解除するように努力します。
具体的に以下の手順に従って実施します。
1. 記録、集計、分析、評価を専用の様式を用いて、その態様および時間・日々の心身の状態等
の観察を記録します。
2. 患者さんや家族に対しての説明を行います。
*身体拘束の内容・目的・理由・拘束時間又は時間帯・期間・改善に向けた取り組み方法を
説明し、十分な理解が得られるように努めます。
*身体拘束の同意期限を越え、なお拘束を必要とする場合については、事前にご家族に
患者さんの状態等を説明します。
*身体拘束要件に該当しなくなった場合には、速やかに拘束を解除するとともにご家族に
報告します。
3 カンファレンスの実施。
*当日の病棟勤務者が集まり(1)切迫性(2)非代替性(3)一時性の3要件の
全てを満たしているかどうかについて確認します。
*拘束による患者さんの心身の弊害や拘束を実施しない場合のリスクについて検討し、
身体拘束を行う場合の拘束の内容、目的、理由、時間帯、期間等について検討します。
*早期の拘束解除に向けた取り組みの検討会を行います。
5)その他の日常ケアにおける基本方針
身体拘束を行う必要性を生じさせないために、日常的に以下のことに取り組みます。
1. 患者さん主体の行動、尊厳を尊重します。
2. 言葉や対応などで、患者さんの精神的な自由を妨げないよう努めます。
3. 患者さんの思いをくみとり、患者さんの意向に沿ったサービスを提供し、多職種協働で
丁寧な対応に努めます。
4. 身体拘束を誘発する原因の特定と除去に努めます。 |