第56回日本透析医学会
平成23年6月17日横浜市パシフィコ横浜にて開催され、泌尿器科いまりクリニックから副院長と透析室の看護師2人が参加し、勉強しました。以下に報告があります。
木下徳雄
緊急企画1「東日本大震災と透析医療:被災地からの報告」1. 宮城県からの報告 仙台社会保険病院 木村朋由 ・宮城県の透析患者は約4700名である。地震発生は日中の透析が終了した時点であった。電気、ガス、水道、通信のライフラインが遮断された。・仙台社保病院では、3月12日には透析可能になった。自家発電があり、都市ガスからプロパンガス に変更していた。「透析難民」に24時間体制で透析可能とラジオで呼びかけをした。・3月12日からは63床をフル稼働し、2.5時間透析(3時間1クール)×8クール/日を丸3日半行った。3月13には電気が復旧し14日に通信も回復したし、1週間に延べ1759人の透析をした。 ・県外への透析患者の移動は直後の3日間のみで全体の4~5%、主に山形県と北海道であった。 ・課題①通信手段の整備、第二・第三の連絡網(MAC無線、携帯メール、衛星通信など) ②災害時透析拠点病院の体制整備
2. 岩手県からの報告 岩手医科大学 大森 聡 ・県内の透析患者は2752人、45施設で行っている。地域が広く(100~200km)、県立病院が多い。・情報の伝達:「安心の担保」「風評被害の防止」に大事である。メーリングリストとFAXで「日刊 県内透析情報」を流した。・物資の供給:業者/企業連合を設立し、窓口を一本化した。県の管理を外し、手続きを簡素化した。集積地の確保、緊急車両の許可、優先給油の確保を取り、5日で14日分の物資を備蓄した。・患者通院搬送の維持:燃料不足がり、宿泊施設と通院手段(透析患者とスタッフ)の確保を行った。各市町村に送迎バス、タクシー券、徒歩通院可能な避難所、消防団による送迎などを要請した。
3. 福島県浜通り・いわき市からの報告 いわき泌尿器科 川口 洋 ・いわき市の四重苦は「地震」「原発」「津波」と「風評被害と孤立化」であった。34万人のうち6~7万人が自主避難した。行政の対応は遅かった。・食糧、ガソリン不足、断水があり、スタッフの欠勤もあった。・透析患者の53%、600名を医療スタッフとともにバスで、新潟、千葉、東京に集団移送した。
4. 福島県と腹膜透析 雅香会おぎはら泌尿器と目のクリニック 荻原雅彦 ・福島県は死者1002人、10万人が避難し、県外避難は35000人であった。福島県は中通り、浜通り、会津の3地区がある。・浜通りは津波被害、原発行政の迷走、原発風評による医療崩壊があり、1500人の透析患者が移動した。紹介状のない患者も多く、地域間ネットワークの形成、コーディネイターが重要である。・福島県は診療エリアが大きく、通院距離も長い。そのため、腹膜透析患者の比率が高い。CAPDからAPDに変更し凌いだ。
緊急企画2「東日本大震災と透析医療:支援地からの報告」1. 新潟県の対応 新潟大学 風間順一郎・支援地となる可能性と被災地となる可能性があった。2/2・3月16日にバスで154人の透析患者を受け入れた。トリアージを行い、患者にタグを付け、氏名・年齢・ドライウェイト・シャント側を記入した。・中越地震の経験が生きた。ガセネタを防ぐため、行政と透析施設の情報共有が必要である。・コーディネイターが迅速かつ臨機応変に対応し宿舎・食事・交通を手配した。
2. 東京都の対応 東京都区部災害時透析医療ネットワーク 秋葉 隆 ・2005年に東京都区部災害時透析医療ネットワークを立ち上げた。透析施設を7ブロックに分け災害マニュアルや透析カードを共有した。今回はこれを活用した。・いわき市からの集団避難した透析患者の透析を斡旋した。同市は原発事故からゴーストタウンと化した。3月17日に都庁にバスを用意し透析307名、入院75名を56施設で受け入れた。 ・患者情報のフォーマット化、バスなど移動手段の整備が必要である。
3. 山形県の対応 清水会矢吹病院 伊東 稔・主に宮城県の津波被害の透析患者を受け入れた。 ・窓口を一本化し、県と矢吹病院とした。受け入れ相談窓口を山形腎不全研究会とし核施設に割り振りした。3月20日までに入院71名(9施設)外来82名(13施設)を受け入れた。・問題点として、停電時の情報伝達の手段の確保、ガソリン不足、食糧不足、物資の不足があった。・縦割り行政のため体制の準備不足があった。誰が責任者か、金とヒトの決定権を決めておく。
4. 北海道の対応 クリニック198札幌 戸澤修平・日本透析医会の災害情報ネットワークのメール「joho-ml」を活用した。 ・3月22日に44名を自衛隊機とバスで受け入れ、3月23日は36名を受け入れた。5月20日までに70名が帰省した。
教育講演「透析患者における造影剤」 群馬大学医学部付属病院核医学科・画像診断部 対馬義人 ・静注にて使用する造影剤には、CTや血管造影に用いるヨード造影剤、MRIに用いるガドリニウム造影剤、超音波検査(US)に用いる超音波造影剤の3種類がある。透析患者においては、これら造影剤の使用指針は腎機能障害のない患者と非常に異なる。・ヨード造影剤による造影剤腎症(Contrast-induced nephropathy;CIN)はよく知られている。腎機能障害が最も重要なCINの危険因子である。しかし透析患者では、水分あるいは浸透圧過負荷とならない限り投与可能であり、透析のスケジュールも特段の配慮は不要である。・ガドリニウム造影剤はショック等の重篤な副作用は稀である。通常の使用方法であれば、腎機能への影響の殆どない。しかし、腎性全身性線維症(Nephrogenic Systemic Fibrosis;NFS)が、ガドリニウム造影剤の副作用であることが明らかになり、透析患者は原則禁忌である。・最近、USに用いる造影剤のSonazoidが一般化してきた。この造影剤は血管外にでることはないので、静注早期には血管プール造影剤として、後期相ではKupffer細胞に取り込まれKupffer imagingとして利用可能である。排泄経路が肺(呼気中)であり、腎機能に関係なく使用可能である。その他重篤な副作用も報告されていない。現在、肝腫瘍性病変のみの適応であるが、適応範囲の拡大が望まれる。
池田 清美
フットケアに対する意識向上を目指して~業務改善とセルフチェック推進
(医)塩屋王子クリニック (医)王子クリニック 内容感想【はじめに】業務が頬雑化する中、定期的なフットチェックを実施できず一方な行為であった。業務改善とセルフチェック推進の取り組みについて報告する【方法】 1.フットチェック表再検討 2.少人数チーム編成 3.実施日告知を含むセルフチェックシート作成 4.ASケア(炭酸泉浴)実施 5.タッチテスト(モノフィラメント)【結果】チェック項目再検討と少人数チーム編成により業務負担が軽減し定期的に実施できた。また告知は事前の保清行動に繋がり、セルフチェックシートは観察に役立った。ASケア普及に努めたが現時点での評価統一が今後の課題である。【結語】定期的なフットチェックは、足への関心を高め患者から訴えを引き出す機会となり早期発見に繋がる。今後も重要な業務と位置付け継続して取り組んでいきたい。
【感想】当院でのフットケアの係わりと大差ないと感じたが、透析中の血圧低下予防とし開始1~1時間30分以内での足浴、下肢マッサージを実施する施設が多かった。糖尿病患者のPAD(末梢動脈疾患)早期発見に努め観察、下肢血管エコー等の検査実施されていた。今後当院でも出来る範囲の患者 の足に触れ必要に応じドプラーでの下肢拍動の確認、観察を行い、学会後患者用DVD貸し出し後感想を聞き、また患者からも聞かれましたが下肢マッサージの手技DVD資料等で学んで行きたいと考えます。今回参加の機会を頂きました事に感謝と共に今回学んだ事を活かしていきたいと思います。
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