佐賀県泌尿器科学術講演会:生活習慣病と排尿障害

平成22年9月24日佐賀市ホテルニューオータニにて開催され、院長が出席しました。南里泌尿器科医院、南里正晴院長による講演:イミダフェナシンの使用経験と、福井大学泌尿器科、横山修教授による特別講演:生活習慣病と排尿障害とがありました。懇親会の後は居酒屋古川にて、横山修教授、魚住教授、野口講師と歓談しました。

70歳以上では夜間頻尿と転倒との相関がある。骨折との相関もある。やせ過ぎた人と太り過ぎた人は共に長生きしにくいことが統計的に報告された。高血圧特に拡張期高血圧と夜間頻尿との相関がある。高インスリン血症は前立腺肥大症の危険因子と言われている。ストレスなどにおけるような交感神経の緊張は前立腺肥大症の危険因子。ネズミの実験では高脂肪食が前立腺肥大症になりやすい。これはテレビの視聴時間が多いと運動量が少ないので下部尿路症状を有しやすいことと関係がある。体重減少は尿失禁に有効。肥満患者のLUTSがダイエットで改善した。前立腺組織内にアンギオテンシン2が多く、肥大症でAT1受容体が減少する。死亡率と心拍数は有意に相関するので、抗コリン剤も心拍数を増やさないものを使用したほうが望ましい。OABは頻脈が多く、ムスカリンM2受容体は頻脈を生じる。ムスカリン受容体に関与の少ない抗コリン剤が良い。

佐賀県医師会医療安全対策(院内感染防止対策)医療従事者研修会

平成22年9月16日に佐賀市文化会館で開催され、泌尿器科いまりクリニックから栄養士が参加しました。以下にその時の報告が有ります。

研修報告書 栄養士 小野富子

医療安全対策:果たして安全になったのだろうか〜取り組みの見直しと今後の課題の検討〜九州大学大学院学研究院 鮎沢純子 先生「10年目」だからこその確認…そして、安全になったのだろうか
平成11年に横浜市立大学付属病院患者取り違え、都立広尾病院薬剤取り違えの事故が発生したことで、平成14年に「医療安全推進総合対策—医療事故を未然に防止するために:医療安全対策検討会議」 が行われ、医療法施行規則が改正されました。病院および病床を有する診療所 医療に係る安全管理のための指針を整備すること  医療に係る安全管理のための委員会を開催すること 医療に係る安全管理のための職員研修を実施すること 医療機関内における事故報告等の医療に関わる安全の確保を目的とした改善のための方策を講ずる事こと 
組織の中での管理の4点セット→指針の準備をしていく大事なこと!
新しい視点での医療安全の取り組み〈体系的〉〈科学的〉〈横断的〉〈継続的〉かつてない医療安全の取り組みが進み、[基本的な考え方]は浸透しつつあり、[現場の体制]も整いつつある。たたし、基本的な考え方には混乱も多い。現場の体制は十分機能しているとはいい難い。加えて取り組みの格差は広がっている。⇒であればこそ、現場の取り組みの見直し、そして今後の展開の検討が必要。視点→「組織」と「マネジメントリスクマネジメントがますます必要になる 事故発生時の対応  問われる法的責任…民事上の責任 刑事上の責任 行政上の責任 保険の手当て 施設賠償保険 自らの安全と安心、医療従事者の安全と安心も忘れてはならない。 —働くルール・マニュアルを守ることは、働く自分を守る事
現場の取り組みを見直す・「院内感染」「医薬品」「医療機器」に関連する手順書は  インシデント ヒヤリハット見直しの視点 データとしてみていくか一つひとつを見ていくか 共有するだけでいい事例のある 項目を決めて集めていくのもこれからの検討事項 まだ活用されていない情報はないだろうか…例えば「疑義照会」 基本を見直す 他の産業で「FoolProof」「Fail Safe」のような考え方が導入されている「FoolProof」…間違えたくても間違うことができないように設定されていること 「Fail Safe」…間違えても事故(大きな事故)にならないように設定されてること 他の産業で「4s」「5s」が徹底させられている「整理 整頓 清潔 清掃」 整理整頓は異常を発見する環境作りである 整理整頓は異常を発見する検出システムである 整理整頓してあるからこそ、見える→ならば異常を発見しやすい整理の方法は? 置き方は? 見える(視える)ようにすることの大事さ 「医療安全」に関する今後の課題(課題) 事故防止・安全管理の取り組みは医療機関だけの取り組みでいいのであろうか 患者さんにも参加していただきたいこと、参加していただけることがあるのではないだろうか 患者参加の医療安全にあたってのスタンス 何も特別なことではない 「患者参加の医療安全」を考えることは、「患者参加の医療」を考えることになる そして、社会で「医療安全」を考え、「医療そのもの」を考えることになる 「次の展開」のテーマのひとつである この研修に参加して医療安全に対しての考え方が少し変わりました。他の産業を参考にすること、ヒアリハットの事例で〜どうして気づくことができたのか体験で振り返ること、アメリカの医療安全で進んでいることなど参考にしていきたいです。

佐賀県医師会内科部会研修会:糖尿病関連講座

平成22年9月11日佐賀市医師会立看護学校にて開催され、院長が出席しました。順天堂大学スポートロジーセンター、河森隆造教授による特別講演、2型糖尿病の第一選択は、がありました。相変わらず河森先生の素晴らしい、芸術的とも思えるほどの美しい講演でした。講演の内容は以前からの一貫した持論である、軽症糖尿病を早期から治療し、重篤化させないことが医師の使命と言うことでした。糖尿病の早期から患者にかかわり、以下にして健康を維持するかが大切。現在は糖尿病薬も多くの選択肢が出来、患者個人に合わせたより良い治療が出来る。

2型糖尿病の治療目的は、1.動脈硬化を防ぎ、脳血管障害や心筋梗塞を防ぐ、2.膵臓のβ細胞のインスリン分泌能を守る。以前よく話題になっていたグルカゴンがしばらく話題から遠ざかっていたが、最近再び話題に上るようになった。DPP-4阻害剤が日本でも使用出来るようになったから。糖尿病とはインスリンとグルカゴンの両ホルモンの分泌異常、bi-Hormonal Disorder が本態。食後高血糖の予防が大切。高脂血症に高血糖が加わると、血管内皮細胞に隙間が出来その間隙からモノサイトが入り、マクロファージになって血管内のリピドを食べて血管内皮に付着しプラークを生じ、これが動脈硬化となる。高脂血症のみでは動脈硬化は起きにくい。インクレチンは多彩な作用が有り、血中ノルエピネフィリンを増やし、運動時のように脂肪を燃焼させることで動脈硬化を防ぐ。普通の糖尿病治療薬では結局糖を取り込むことで体重が増えやすいが、DPP-4阻害剤は体重を増加させない。高血糖での酸化ストレスでは膵での転写酵素であるPDX-1の活性を減らし、β細胞の機能を低下させる。インスリンの存在で膵のα‐細胞からのグルカゴン放出が抑制されるが、2型糖尿病で低インスリンの状態ではα‐細胞の抑制が効かないのでグルカゴンの放出が増え、さらに高血糖になる。

2型糖尿病での食後高血糖を押さえることが、種々の合併症を防ぐ。この意味においてα-GI薬は意義がある。日本での2000例の研究では、軽症糖尿病の進行をα-GIが有意に予防した。欧米人ではインスリンの量が日本人に比べて大量に分泌されるので、糖尿病になりにくいと言われてきたが、演者らの研究では日本人と欧米人のインスリン分泌量に差は無かった。しかし、日本人の方が糖尿病になればインスリンが枯渇しやすいのかもしれないがまだ不明。糖毒性と言うことが言われているが、高血糖下ではインクレチン受容体が減少することが本態のようだ。そこで、外部インスリンの使用で高血糖を是正しながらインクレチン受容体を回復しながら治療を行うと良い。

第75回日本泌尿器科学会佐賀地方会

平成22年9月4日マリトピアにて開催され、院長と副院長が出席しました。一般演題と、東京女子医大東医療センターの中沢速和准教授による特別講演、腎癌に対する腎保存手術、とがありました。腎癌でT1a、径が4センチ以下、のものは腎部分切除で根治出来る。そして、開腹手術や内視鏡手術のビデオを供覧しました。

平成22年度新型インフルエンザ予防対策研修会

平成22年9月3日佐賀市アバンセにて開催され、院長が出席しました。神戸市保健所の白井千香参事による講演:神戸市における初期医療体制、保健所の感染予防対策について、那覇市立病院の知花なおみ医師による講演:那覇市立病院における発熱外来医療体制についてが有りました。

インフルエンザが流行期に入り、患者が急増すると1箇所の発熱相談センターのみでは対応出来ない。多くのの医療機関が対応することが必要。現在の医療体制を崩すような過度の患者集中を避け、地域の医療資源を有効に活用することが必要。

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第22回九州排尿機能セミナー

平成22年8月21日福岡市ホテルニューオータニにて開催され、院長が出席しました。

伊万里有田地区医師会学術講演会:かかりつけ医のための認知症診療とケア

平成22年8月20日伊万里市迎賓館にて開催され、院長と職員4人が出席しました。特別講演が2つ有りました。有田共立病院脳神経外科、桃崎宣明部長による、当院における認知症の診断と治療、森本病院、鹿井博文院長による、認知症の理解と対応:実践現場の工夫、とがありました。今回は聴衆が多くて、会場では立ち見も出るくらいの盛況でした。以下にその要旨を書きます。

脳神経外科から診て、治る認知症として脳血流障害がバイパス手術で治ったことが有る。慢性硬膜外血腫も手術で治る。水頭症はクモ膜下出血後などの原因が有り、3症候:認知症、歩行障害、排泄障害がある。

認知症を理解し、思いやりと声掛けが大切。認知とは幸せになるために外部を認知する能力。大脳前頭葉前野に情報の統括部位が有り、自己の生存にとって最適行動を取るための能力がある。世界中で7秒に1人アルツハイマーになっている。人は周囲とのかかわり合いの中でしか生きられないので、孤独が最悪。孤独になると認知症になりやすい。BPSD:認知症に伴う問題行動や周辺症状が出てくる。取り繕い反応(AD)を生じ、物を移動したことを忘れて、その不安から物取られ妄想を起こす。家族や周囲の対応が良くないとADを生じる。譫妄には抑肝散と抑肝散に陳皮、半夏を加えたスーパー抑肝散が良いが、低カリウムに用心。夜間の不眠や攻撃性にはリスペリドン(スーパーハロペリドール)2錠夕、就寝前、またはコンスタンやオランザピン(4週間で減らす)が良い。糖尿病がなければセロクエルもよい。

院内勉強会:8月分

平成22年8月17日院内で勉強会を行いました。今回は第一三共(株)佐賀営業所、住永秀之主任による新型インフルエンザについての講演が有りました。次に院内安全対策委員会の野中主任から、院内の昨年度のヒヤリハットの集計報告が有りました。最後に透析室など病院の地震災害の状況を示す、地震テストのビデオが有りました。

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第23回全国有床診療所連絡協議会総会:

平成22年7月31日岡山市コンベンションセンターにて開催され、院長が出席しました。

日本医師会長の原中氏の挨拶が有り、有床診療所を子供が喜んで継承出来るようになることが望ましい。しかし、今の診療報酬が有床診療所の入院費を安く抑えているので、経営が厳しくて、有床診療所が次第に減少している。ビジネスホテルよりも安い入院費を増やし、経営を安定させないと有床診療所の未来は暗い。地域医療の大きな担い手の有床診療所が危機に瀕している日本の現状を医師会長が憂えていました。

次に参議院議員で適切な医療費を考える議員連盟の桜井充氏が公演しました。WHOの報告では、日本の医療が世界1位で、医療の品質、医療のかかりやすさ、医療費の高くないことがすべて世界1のレベルでした。医療は不況に強く、医療費を増やすことは医療における就労者数を増やし、地域経済に貢献すし、国の借金を増やさないことが英国の経験でもわかっている。医薬品や医療器械も不許に強くて、リーマンショックでも輸出も減らなかった。しかも世界で一流の医薬品や医療機械を開発し作っている国は日本を含めてほんの僅かである。日本はこれから車や電器製品で世界と競争するよりも医薬品と医療器械で競争するほうが良い。有床診療所は戦う医療よりも看取りの医療を必要とする時代の要請に合っているので、これからも必要。

伊万里有田地区医師会学術講演会:最近のB型肝炎診療

平成22年7月14日伊万里市迎賓館にて開催され、院長が出席しました。以下にその要旨を書きます。

日本では肝炎で毎年35,000人が死亡しており、その中でも佐賀県が最大で、死亡率47.6人/10万人。佐賀県のHBVキャリアの80%が未検査。HBVキャリアも佐賀県は全国平均より多い。無症候性キャリアの内0.1〜0.4%が毎年肝癌になっており、キャリアの内10%が慢性肝炎になり、そのうち2%が肝癌になる。HBVにかかると体内からは一生消えないで、DNAが肝細胞に残る。以前の感染経路は母子感染による垂直感染でジェノタイプCあったが、今は外国人との性的接触によるジェノタイプAの感染もある。治療の目標はウイルス量をなるべく減らし、少ないウイルス量を維持し、肝の線維化を防いで、肝硬変や肝ガンを予防すること。抗ウイルス製剤のラミブジン、アデホビル、エンテカビルが主流。しかし、近年ウイルスに薬剤耐性が出来た。そして、抗ウイルス製剤を急に中止すると跳ね返り減少でウイルス量が急増することもある。ウイルス性剤は高価なので医療補助が出ている。そこで、HBVキャリアでもウイルス量の少ない若い人は経過観察でも良いと言うことが言われている。

ユニシア・ネシーナ新発売記念講演会:

平成22年7月13日佐賀市ホテルニューオータニにて開催され、院長が前半のみ出席しました。九州医療センターの吉住秀之内科医長による特別講演、糖尿病治療の新戦略;内服薬をどう使いこなすか、川崎医科大学内科、柏原直樹教授による特別講演:高血圧治療におけるARB/配合の臨床的意義、がありました。

A1c5.6~6.0の患者が糖尿病疑い。Lanctでの報告では血糖の管理は良く出来るが、糖尿病の管理では負けている。2型糖尿病では発症の3から6年前に膵β細胞の機能不全がおきており、インスリン感受性の低下、食後高血糖が出る、そのためにインスリンの過分泌が起こり、β細胞が疲れて、ついにインスリン分泌が低下し、本格的な高血糖になる。太ると言うだけでβ細胞の機能低下が起こる。β細胞の機能低下が80%起これば糖尿病になる。

2型糖尿病の歴史:高血糖の是正のみを行ってきたと言うことを反省している。糖尿病の初期治療が重要であり、初期治療が記憶される。1990年以前は血糖を下げることが重点。1990〜2000年では微小血管障害を防ぐことに重点、2000年以降は大血管障害を防ぐことに重点。高血圧治療の歴史:まず初めに血管拡張剤が開発され、次にアドレナリン阻害、利尿剤、β遮断剤、中枢神経抑制、カルシウム拮抗剤、ACE、ARB、アルドステロン阻害剤、からレニン直接抑制剤に移り変わってきた。糖尿病の治療の歴史も初めのSU剤から、BG、α‐GI、チアゾリン、DPP-4が開発された。血糖を増加する8個の因子は、β細胞の機能低下、グルカゴンの増加、肝のグルコース増加、インクレチンの減少、脳神経伝達物質の減少、脂肪細胞からの脂質分泌増加、腎からの糖の再吸収、筋肉のグルコース取り込みの低下。

伊万里市東部医師会:日常生活における腰痛疾患の診断と治療

平成22年7月12日伊万里市迎賓館にて開催され、院長と副院長とが参加しました。唐津赤十字病院整形外科の生田光部長による上記の講演がありました。

腰痛症は自覚症状の中で男性では1番多く、女性では2番目に多い。通院患者の主訴のうち腰痛は、高血圧に次ぐ2位。腰痛の原因は2種類あり、一つは器質的なもの、もうひとつは精神的なもの。器質的なものの中には脊椎とその周辺由来のもの、変性症、感染、炎症、腫瘍、疲労、大動脈瘤解離、膵臓炎、骨盤の不安定症、変形聖子関節症などがある。

椎間板ヘルニア:椎間板の髄核が周囲の繊維輪を破って後方に突出したもの。原因は外傷、振動、タバコなどがあるが、意外に遺伝性が多く、上位腰椎の変性の77%に関与し、下位腰椎でも43%。男が女性に比べて格段に多い。20歳台から40歳代に多い。下位腰椎に多く、発症後1週間で痛みは軽減するがその後下肢の痛みやしびれが出現する。MRIでは痛みの無いヘルニアは多い。ヘルニアの診断は神経診察と症状が一致して初めて確定。手術しないでも自然治癒が多く、80%は予後良好で、10年のうちに93%が自然治癒する。そこで、高度の痛みや麻痺、排尿症状の無いものははじめの3ヶ月間は保存療法を行う。

脊柱管狭窄症:男女比は同じ、中高年に多い、下位腰椎が多く、立位で症状が出て間欠性跛行をするが、前屈や坐位で軽快する。神経根型は片側の症状が多くて予後が良く、患者自身が生活習慣を変えることで症状が軽快する。馬尾型や混合型では両側の症状が多く、40%は進行し増悪する。症状が出ないように患者自身が工夫しても病気が進行する。

骨粗鬆症による椎体圧迫骨折:女性に多く、患者数が増えている。胸椎下部から腰椎上部が多く、胸腰椎移行部の圧痛や叩打痛がある。寝返りや起き上がる時の疼痛有り。レントゲン検査では仰臥位よりも坐位での撮影で圧迫骨折がより明らかになる。仰臥位で寝ないで側臥位で寝るように心がけ、早めに専門医へ紹介。

化膿性脊椎炎:以前よりも増加しており、これは糖尿病などの危険因子が増えたため。黄色ブドウ球菌が多いが最近では宿主が弱って起炎菌が多様化してきた。先行感染が有り、発熱と腰背部の激痛があれば化膿性脊椎炎を疑う。背椎の不撓性や斜頸を生じる。発症数週間くらいではレントゲン検査では所見が見られない。

CKD治療研究会:佐賀県医師会糖尿病関連講座

平成22年7月1日佐賀市ホテルニューオータニにて開催され、院長が出席しました。佐賀大学内科、宮崎博喜助教授による講演:糖尿病腎症の治療管理と、名古屋大学内科、安田宣成准教授による特別講演:実践的なCKDの診療連携、とがありました。以下に要旨を書きます。

糖尿病腎症の治療管理:

世界で1億2000万人の患者が居て、この内20%が腎症になる。1998年から透析の原因疾患として、糖尿病が慢性腎炎と同じになり、以後は糖尿病が原因の1位。糖尿病性腎症の5段階の病期を知る。年齢と血清CrでeGFRを診て病期が判る。さらに尿蛋白のクレアチニン補正を行い1回尿で1日蛋白尿が判り病期診断に役立てる。糖尿病患者が全部糖尿病性腎症とは限らないので、非糖尿病性腎症を除外する。糖尿病の病期が短い腎症、尿潜血があるのに尿蛋白が少ない腎症、網膜症が無い、発症が急速などの場合は非糖尿病性腎症(NORD:Non Diabetic Renal Disease)を考える。糖尿病性腎症の治療原則としては、血圧と血糖の管理、レニン・アンギオテンシン系の管理、しかしこれが難しい。治療は7つ有り、1、ARBを処方、尿蛋白を減少させ、腎症の進行を防ぎ、用量依存性の作用がある。2、食事療法、カロリーの制限として30〜35Kcal/BWkg、蛋白食の制限として0.6〜0.8g/BWkg、3、高尿酸血症の管理、細菌は高尿酸血症が痛風や尿路結石のみならず、動脈硬化や高血圧、心血管病や腎症との関係が言われている。血中尿酸値が7以上であれば、年齢と性に関係無く生活習慣病として治療が必要。にょうさんちが7.0〜8.9であれば腎症の発生が2倍になり、9.0以上では3倍になる。目標は6.0以下。基本はアロプリノールであるが腎排泄なので腎不全には減量を。ロサルタンにはURTA1阻害作用があるので尿酸の産生を減らす。4、アシドーシスの管理、重曹によるアルカリ化が必要。BEは静脈血で測定すれば充分であり、動脈血と比べて+2.0くらいの多い。5、脂質の管理としてはスタチンが効果的。6、クレメジンの内服。確実に透析導入を伸ばす効果がある。1回6g1日18g必要、量が多くて飲みにくい。他剤と同時に飲むと他剤を吸着するので避ける。7、腎性貧血の治療。多くの患者で見落とされていることがある。高血圧になることも。6000単位を毎週1回、維持としては毎月6000から12000単位。Hbが12.0以上にならないように加減する。以上の7つの多角療法は糖尿病性腎症の伸展を防ぐ、NEJMでの報告有り。

実践的なCKDの診療連携

毎年3月の第2木曜日が世界腎臓日になって、毎年各地でいろんなイベントがある。2008年12月末での日本の透析患者は29万人居て、毎年1万人増えている。透析の医療費は1兆2000億円。透析の原因疾患は慢性腎炎の治療法が改善したので慢性腎炎が減って44.5%が糖尿病性腎症、10%が腎硬化症や原因不明。透析患者を減らすためには糖尿病性腎症と腎硬化症を減らすことが必要。CKDの定義は、腎に何らかの異常が判るもの、尿蛋白やeGFRが60未満のもの。CKDの病期には5段階有り、年齢によるeGFRで病期判断する。3才児のCr0.4以上では3期のCKDと同じ。老人のCr1.2以上でもCKD3期になる。これは全内科患者の20%にあたる。2009CKD診療ガイドラインではIgA腎症やループス腎炎は早期に専門医を紹介したほうが予後が良い。IgA腎症はまだ腎障害が少ない早期にステロイド治療などのために専門医に紹介する。そのまま放置すると40%が透析になる。糖尿病性腎症や腎硬化症はかかりつけ医で診る。腎専門医への紹介時期はeGFRが50以下あるいは、尿蛋白が++以上の時。老人ではこの限りではない。糖尿病性腎症の治療としては危険因子である高血圧と高血糖の管理。ARBが第一選択であるが、腎血管の狭い腎硬化症などに処方すると急速に腎障害が進行することもあるので要注意。腎・心臓・貧血症候群では各疾患が相互に相乗作用し、3つ揃うと予後不良。CKDの消炎鎮痛剤としてはアセトアミノフェンを多めに使用する。頚動脈エコーと負荷心電図をかかりつけ医で行って欲しい。

 

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