伊万里市東部医師会:日常生活における腰痛疾患の診断と治療
平成22年7月12日伊万里市迎賓館にて開催され、院長と副院長とが参加しました。唐津赤十字病院整形外科の生田光部長による上記の講演がありました。
腰痛症は自覚症状の中で男性では1番多く、女性では2番目に多い。通院患者の主訴のうち腰痛は、高血圧に次ぐ2位。腰痛の原因は2種類あり、一つは器質的なもの、もうひとつは精神的なもの。器質的なものの中には脊椎とその周辺由来のもの、変性症、感染、炎症、腫瘍、疲労、大動脈瘤解離、膵臓炎、骨盤の不安定症、変形聖子関節症などがある。
椎間板ヘルニア:椎間板の髄核が周囲の繊維輪を破って後方に突出したもの。原因は外傷、振動、タバコなどがあるが、意外に遺伝性が多く、上位腰椎の変性の77%に関与し、下位腰椎でも43%。男が女性に比べて格段に多い。20歳台から40歳代に多い。下位腰椎に多く、発症後1週間で痛みは軽減するがその後下肢の痛みやしびれが出現する。MRIでは痛みの無いヘルニアは多い。ヘルニアの診断は神経診察と症状が一致して初めて確定。手術しないでも自然治癒が多く、80%は予後良好で、10年のうちに93%が自然治癒する。そこで、高度の痛みや麻痺、排尿症状の無いものははじめの3ヶ月間は保存療法を行う。
脊柱管狭窄症:男女比は同じ、中高年に多い、下位腰椎が多く、立位で症状が出て間欠性跛行をするが、前屈や坐位で軽快する。神経根型は片側の症状が多くて予後が良く、患者自身が生活習慣を変えることで症状が軽快する。馬尾型や混合型では両側の症状が多く、40%は進行し増悪する。症状が出ないように患者自身が工夫しても病気が進行する。
骨粗鬆症による椎体圧迫骨折:女性に多く、患者数が増えている。胸椎下部から腰椎上部が多く、胸腰椎移行部の圧痛や叩打痛がある。寝返りや起き上がる時の疼痛有り。レントゲン検査では仰臥位よりも坐位での撮影で圧迫骨折がより明らかになる。仰臥位で寝ないで側臥位で寝るように心がけ、早めに専門医へ紹介。
化膿性脊椎炎:以前よりも増加しており、これは糖尿病などの危険因子が増えたため。黄色ブドウ球菌が多いが最近では宿主が弱って起炎菌が多様化してきた。先行感染が有り、発熱と腰背部の激痛があれば化膿性脊椎炎を疑う。背椎の不撓性や斜頸を生じる。発症数週間くらいではレントゲン検査では所見が見られない。 |