第43回 九州人工透析研究会総会
平成22年12月12日(日)かごしま県民交流センターにて開催され泌尿器科いまりクリニックから透析スタッフが参加しました。以下にその時の報告があります。
看護師 中村 雅美
保存期CKD患者へのフットケア介入 仁誠会 大津第一クリニック 【目的】年々、HD患者のPADや足病変は増加傾向にあり、CKDの段階から介入していく必要があると考えた。そこで、CKD外来患者に対してフットケアの介入を試みた。【対象と方法】CKD外来患者23名に対して、フットケアに関するアンケート調査、足の観察を行い、患者の状態に応じたフットケアを行った。また、動脈硬化についても当法人で作成している動脈硬化ランク分類を用いて、分類を行った。下肢切断ゼロを目指して、患者のフットケアに取り組んで、だいたい2週間から1ヶ月おきに観察し、ケアを行った。ほとんどの患者が、乾燥や白癬やしびれ・痛みなど、なんらかの足病変があった。また、DM性神経障害によりひび割れや亀裂が悪化していた患者もいた。しかし、自分でケアを行っている患者は少ない。フットケアの必要性について知る機会は少なく、そのままになっていることが多く、足をみてはじめて気付くことが多い。患者から言われないかぎり、ほとんど足をみることはない。そのためにも、早くからの足の観察を行い、生活習慣の見直しや日常生活の指導、ケアの介入を行うことは重要なことであると思う。
透析患者を支える家族の介護負担感の実態 健康保険南海病院 腎センター【目的】当院の透析患者164人の平均年齢は65.9歳で、全国同様に高齢化が進んでいる。今回、当院における透析患者の家族の介護負担感の実態を明らかにし、家族への援助方法の示唆を得ることを目的とした。【結果・考察】当院の透析患者は70歳代以上が40.2%、主介護者は34.6%といずれも、高齢者が多いことがわかった。また配偶者による介護が68.5%と最も多かった。送迎をしている家族の36.1%がそれを負担に思っていた。介護負担内容と介護者の年齢については、「腰痛」「疲れ」の2項目で、患者の年齢とでは、その他「食事の介助」睡眠不足」など11項目で相関関係にあった。 今後、確実に高齢化する患者、家族に対し、よき相談相手となれるよう信頼関係を深めるとともに、社会資源の活用など他職種と連携し、少しでも介護負担を軽減できるよう援助していく必要がある。老々介護負担が多くなってきて、患者・家族の高齢化による負担が増してきているが、社会的な援助はまだまだ少ない。高齢になると、水分・食事の管理が難しくなってくる。そのため、家族の協力も必要だが高齢者だけの生活だと難しい事もあるので、サービスなど活用し、よりよい生活が送れるように病院や施設などとの連携や情報提供など大切だと思います。患者の抱えている不安や問題点、ニーズにこたえ、少しでも負担感が軽くなるよう努めていかなければと思いました。
臨床工学士 布巻 秀克
1 AN69 膜による貧血、栄養改善効果 特定積層型ダイアライザー(AN69膜)の使用をすることによりヘモグロビン値、鉄代謝が改善された例である。しかし当てはまらない例もあるが、実際、AN69膜の使用により血圧低下が少ないといわれている。2 日機装社製DCS-211を18年間使用し得たメンテナンスの有用性 定期的なメンテナンスが必要であり、早期発見ができ、早期対応で透析装置寿命をのばされるまた、消毒薬もパーツの腐食を抑えられる。3 透析医療における医療事故と危険管理 ヒュウマンエラーとは、人間の生まれながらに持つ諸特性と人間を取り巻く広義により決定された行動のうち、ある期待された範囲から逸脱したものである。人間側の観点から説明すると、ヒュウマンエラーは人間の本来持っている特性と、人間を取り巻く広義の環境がうまく合致していないために引きおこされるものである。事故報告書ではヒュウマンエラーは原因であるとされることが多いが、よく考えると原因でなく結果である。たとえば、不注意は、何らかの理由で、本来、注意が向かなかったためであるので、他のものに注意を奪われたという(結果)である。透析中は患者の臓器が体外に露出しているようなもの、リスクは非常に高い。一つでもリスクを下げるように努力しなければならない。感想 いろいろ聞きましたが、臨床工学士として、日々の機械の点検が重要でありこれからも保守点検をして、機械の故障をできるだけなくすように努力したいと思います。また危険因子を出来るだけ少なくするために努力しなければならない。
井本 邦子
題名: 血液透析導入前訪問の取組みとその効果【目的】透析室看護師が入院中の患者に対し、HD導入前訪問を行う事で、患者に安心感を与える事が出来る。また、患者が透析に対するイメージを持つことが出来、不安を医療者へ表出し軽減することが出来る。【方法】対象:HD導入患者12名(緊急透析、クリニカルパスによるHD導入、急性肝不全、認知症、精神疾患患者を除く)。期間:2009年8月~2010年3月方法:1.透析室看護師がHD導入予定の患者に対しアンケートをとる。2.病棟看護師が、HD導入前日迄にHD導入前患者に対し導入期パンフレットに沿って説明を行う。3.透析室看護師が患者を訪問しオリエンテーションを行う。4.退院決定後に透析室看護師がHD導入後の患者にアンケート調査を行う。【結果・考察】HD導入前訪問を取り入れたことで、患者の透析に対する不安が軽減され、安心感を得ることが出来た。しかし、「不安を言いたくない」という患者の言葉も聞かれたことから、透析導入期の患者は透析を始めなければならないという対象喪失(衝撃・ショック、防衛的退行、承認)の過程にある為、今後は更に導入期の心理プロセスを考慮した個別的なHD導入前訪問が必要であると思われた。【感想】 慢性腎不全保存期にある患者は透析という言葉は知っていても実際に透析療法をイメージするのは難しく、殆どの患者は医師からの説明のみで導入することが多い。「透析だけはしたくない」「一生透析をしなくてはいけない」という、未来悲嘆から透析は全ての療法の最終段階のように捉えられている。透析前訪問により、透析療法の事、透析医療費、仕事の継続の問題、日常生活の過ごし方について、事前に看護師に相談する事により患者の不安は軽減される。透析導入を告げられた患者が導入後のライフスタイルの変化に適応し、生涯継続しなければならない透析療法を受け入れていく為に、透析看護師が導入前から継続的に介入していくことが重要であると感じた。
栄養士 小野富子
DWとGNRIの変化から考察した入院血液透析患者の栄養状態 白光会白石病院 栄養科 執印 友美 目的:当院におけるこれまでの入院血液透析患者の栄養状態と予後の関係を食事摂取やDWの変化だけでなく、栄養管理指標であるGNRI(Geriatric nutritional risk index)を算出することでretrospectiveに検討した。 方法:平成18年より当院に1年以上の入院歴のある血液透析患者51名(男/女 31/20、平均入院期間34.8ヶ月、平均透析期間61.5ヶ月)について、食事摂取量90%以上の患者(A群:26名)と死亡退院症例(B群:25名)の入院期間中の食事摂取量、GNRI、BMI、BUN、Cr、P、CRP、Hb、nPCR、Kt/Vの平均値を比較。また、B群のDW、GNRIの変化を観察し考察した。結果:B群はA群に比べ、食事摂取量、GNRI、BMI、血清アルブミン、Cr、Pが有意に低く、年齢、CRPは有意に高かった。2群間の性別・原疾患に差はなかった。B群では経過中DWが4.2kg減少しており、56%の患者が死亡前平均7.3ヶ月よりGNRIが75以下に低下していた。結論:今回の検討により、長期入院血液透析患者の栄養状態の変化を食事摂取はもとより、DW減少、GNRI低下、Cr、P、CRP値などに留意し、定期的に把握することにより、栄養量変更の提案など積極的に行っていく必要性を改めて認識した。栄養スクリーニング法—GNRI(Geriatric nutritional risk index)はBouillanneらによって高齢患者向けに作成された栄養評価指標であり、血清アルブミン値と現体重および理想体重のみを用いて算出するきわめて簡単な方法。透析患者の栄養スクリーニングに優れている。GNRI=1.489×血清アルブミン値(g/dl)×10+41.7×(現体重:DW/理想体重)ただし、この式でDWが理想体重より多い場合にはDW/理想体重を1とする。理想体重は、BMI=22となる体重。栄養障害リスク 82未満—重度栄養障害リスク 82〜91中等度栄養障害リスク92〜98軽度栄養障害リスクこのGNRIは、非常に簡単な式で算出できる指標であるが、他の栄養指標ともよく相関する。 臨床栄養の2009の9月号に腎不全・透析患者の栄養障害とアセスメントで、GNRIは透析患者の栄養スクリーニング法として十分に有効であると掲載されていました。この病院では入院患者を対象とされていますが、当院の透析患者もGNRIで計算を行ってみて、今後の指導にいかせるか試してみたいと思います。今回透析研究会に参加させていただきありがとうございました。
看護師 吉田和子
一般演題 {看護・CKD}血液透析導入前訪問の取り組みとその効果「目的」 透析室看護師が入院中の患者に対し、透析導入前訪問を行うことで、患者に安心感を与えることができる。また、患者が透析に対するイメージを持つことができ、不安感を医療者へ表出し軽減することができる 方法: 1.透析室看護師が透析導入予定の患者に対しアンケートをとる。2.病棟看護師が、透析導入前日までに導入期パンフレットに沿って説明3.透析看護師が患者を訪問し、オリエンテーションを行う4.退院決定後に、透析室看護師がアンケート調査を行う 結果: 透析導入前訪問を取り入れたことで、患者の透析に対する不安が軽減され安心感が得られたが、不安を表出されない患者もいた。導入期の患者は、衝撃・ショック・防衛的退行・承認の過程にある為、個別的な透析導入前訪問が重要である
保存期腎不全から導入までの受け持ち制を取り入れて 保存期からの受け持ち制について、スタッフへのアンケート調査及び患者・家族への聞き取り調査を実施した結果スタッフは、1、患者の性格や生活背景が予め把握できた。2、患者及び家族とのコミュニケーションが図れた。3、導入後の指導がスムーズに行えた 患者・家族は 1、顔見知りのスタッフがいて安心だった。2、何でも聞きやすかった。 3、透析開始後の医療費、仕事の継続、日常生活の過ごし方に不安がある。保存期からの受け持ち制の導入は、早い段階から信頼関係を築くことができ導入時の患者の不安感を軽減できるという意味で有用であった。< 感想 >当院で、外来通院中の保存期腎不全の患者さんに対して、透析スタッフの関わりがなく導入前、導入時初めて顔を合わせることが多い、今回、発票を聞き、保存期から、直接透析スタッフが介入し情報を共有することで、導入時の不安を軽減する為にも関わりが重要だと痛感しました。関わっていくタイミング時期や指導内容など透析スタッフで話し合っていきたいと思います。今回、出席させて頂きありがとうございました。
氏名 副島江美子
講演題:「 保存期腎不全外来での透析看護師の役割 」演者:医療法人 鹿児島愛心会 大隈鹿屋病院 透析室内容抜粋 腎不全患者の増加に伴い腎臓保存期外来を開設 保存期外来では患者を目的として様々な職種による「腎臓教室」をおこなっていたが、すべての患者が教室を受講するわけではなくまた、受講した患者すべてが教室の内容を理解してるわけではなく、透析導入前にシャントトラブルや高カリウム血症による緊急導入になる症例も少なくなかった。透析導入前の患者教育と透析治療に対する不安の軽減を目的として保存期腎不全外来にて直接透析看護婦が介入された。このことにより透析導入前に緊急導入する患者の発生は軽減された。しかし患者の不安を軽減することができたか、透析看護婦が保存期腎不全患 者に関わることの有用性と振り返りもみらられた。感想 保存期腎不全の時期にどのタイミングで透析看護婦が関わったがよいのかある病院では、Crが6mg/dI時点で透析看護婦が関わりをもつようにされている。Cr6になるとシャント作製してる当院でも透析看護婦が関わり透析についての話をし導入に対して不安感をもたせない様、患者の受容度、性格、生活背景を踏まえた上で関わっていく必要がある。今後は、外来ナースとの情報交換を密に行うことを統一したい。また 透析室での感染対策や針刺し事故によりC型肝炎を発症したナースの例などその後の対処の仕方など発表を聞いた。このような研究発表を聞いてくると改めてまた勉強しようと意欲がわいてきます。ありがとうございました。
池田 清美
糖尿病透析患者におけるフットケアの取り組み ~予防の重要性~健和会戸畑けんわ病院 牟田 優子【はじめに】 糖尿病患者のトラブルとは深い関係にあり、又透析患者も末梢動脈疾患の発生率が高い。透析室業務に携わるようになり、以前よりも多くの足病変を見るようになった。糖尿病透析患者のフットケアの重要性を、当施設でもフットケアへの取り組みを行い報告する。【問題点】 スタッフの意識調査を行う。1、定期的に観察する機会を定めていない2、病変が発生してからの対応で予防策がない 3、スタッフにより観察のポイントが違う。【対策】 足管理表を作成する。内容は写真撮影・動脈触知・フォンテイン分類と傷・痺れ・冷感・うおのめの有無とした。対象は糖尿病透析患者でリスクの高い患者を選出した。【考察】 表を使用し統一した観察とケアを提供出来るようになった。患者のセルフケアに向上を促し、足病変の発生率の減少に繋がっていくだろう。【結果】 透析患者に週3回4時間の観察・ケア出来る時間があり、十分に有効活用していかなくてはいけない。【感想】当院でも導入時にフットケアチェックを施行しますが移後の観察に対し、定期的な期日を定めていない為、個人によって異なる。糖尿病性足病変患者に対し一名は専門医にて受診し内服・点滴等により完治現在1名の壊死部数箇所あり下肢の痛みがある透析中の足浴も血圧低下・時間的余裕なく今後、当院透析室においても定期的下肢の観察にて早期発見に努め・患者指導等など改善していく必要があると考えます。
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