第68回佐賀県人工透析懇話会:
平成22年2月18日(木)18:30~21:00佐賀市アバンセホールにて開催され、副院長と透析室職員5人が参加し勉強しました。以下にその時の報告を載せます。
看護師 吉田和子
【特別講演】「再発見 腎臓移植の基本とその進歩」福岡大学医学部 泌尿器科学 講師 中村信之 先生 腎臓移植のイメージは?移植医療への社会の強い不信感、透析室には腎臓移植が廃絶した患者が戻ってくる、腎臓移植の成績は、移植者の日常生活は 腎臓移植の基本、腎臓移植レシピエント(受腎者)の適応の判断と術前検査、移植手術に耐えうる体力、癌と活動性感染症の除外、HLA型検査とクロスマッチ、腎臓移植手術、免疫抑制法、感染症の予防 検査 治療 腎臓移植の進歩、術式の進歩、免疫抑制剤の進歩、感染症への対応の進歩、ABO血液型不敵応移植の進歩の確立 腎臓移植の成績 腎臓移植は、わが国では年に1200例以上行われ、これまでに22000人以上が腎臓移植を受けている。次々に新しい免疫抑制剤が開発され、腎臓移植の成績は年々向上している。特に、2000年以降の成績では、生体腎移植の5年生着率が90.9%、献腎移植においても、78.6%と向上している。
看護師 中村 雅美
シャント感染予防(手洗いの再教育) 医療法人芳生会 和田内科循環器科 [はじめに] 当院では今年になってシャント感染者による再手術を余儀なく必要とした二人の患者を経験し再度シャント管理の必要性を再認識した。そのためシャント感染対策として自己管理が充分出来ているか個別調査を行い、その問題に対しシャントの手洗い再教育を行ったので報告する。[方法]全透析患者に対してシャントの手洗いに関するアンケートを実施。当院でのシャント感染に関する原因を調査後、実例をもとにポスター、パンフレット等を作製し再教育を行った。[結果] アンケート調査の結果では手洗いなどの自己管理が不十分な患者が多かった。また、シャント部の清潔に関して無関心の患者もいて、上腕部までの手洗いが徹底されてなかった。シャント管理に対する再教育を行うことで患者自ら清潔意識を持つようになり入室前にシャント肢の手洗いを行うようになった。[まとめ] 今回の再教育により入室前に手洗いを実行する患者が増加した。これからも定期的なシャント感染の問題対策に取り組んでいきたいと思う。透析患者総数130名のうち、糖尿病患者が71名いた。シャント音の確認や清潔などの認識が薄かった。そのため、改善策としてポスターやパンフレットなどを使用して患者指導を行っていた。指導後、46%から98%にまで患者の認識があがった。清潔に対しても、ほとんどの患者が手洗いを行うようになり意識の向上につながった。当院では、透析室に入ってからの手洗いは行っていないが、シャント感染は、ほとんどみられていない。穿刺前にシャント肢の酒精綿での消毒と回収時の消毒を行っている。グラフト挿入している患者は、清潔操作でイソジン消毒している。シャント管理では、シャント音やスリルの確認、対処法など冊子などを使用して指導している。透析患者にとって、シャントは不可欠なものなので、管理していくことは大切なことです。その為にも、指導してよりよい透析生活を送れるようにしていきたいと思いました。
准看護師 池田 清美
「再発見、腎臓移植の基本とその進歩」福岡大学医学部 泌尿器学科 講師 中村 信之 先生 移植…移植医療への社会の強い不信感。 腎臓移植にも問題や限界はあるが、末期腎不全の唯一の根本的治療法 健康な人と変わらない日常生活。 手術・全身麻酔に耐えうる体力(循環器合併症の除外)、感染症・悪性腫瘍がないこと(治療によっては可能) 血液型不適合…以前は絶対条件 現在は、血漿交換など血液型抗体値が低下すれば可したがって、血液型不適合でも移植は可能。 移植前に血漿交換を行い、ドナーの血液型に対する抗体値を低下させる。 (成人は、脾臓摘出して大きな問題なし) ドナーの年齢は考えないが、70才以上の提供者は腎機能低下も考えられ断られる。80才以上は難しい。感染症…移植後3~4週間後 細菌・ウイルス・真菌(カビ)などの病気 拒絶反応を起こしやすい。鏡視下のドナー腎摘出、免疫抑制剤の進歩、新たな感染症の出現、BKウイルス、感染症への対応の進歩、ABO血液型不適合移植の確立、脾臓の摘出も不用になった。(感想)私自身、透析患者さんと共に腎移植キャンペーン(1回/年)に参加し、意思表示カード配布などのお手伝いをさせていただきました。腎臓を提供する問いに対して、YESと答えることは出来ませんが(死体腎提供に対し)健康である自身、透析患者と向き合う中で週3回の透析で拘束される患者の中には、若い方もいます。また、実際に移植により透析療法から離脱し、元気に働いている方も見てきました。今回改めて、移植ということを見落としていたので、今後からは少しでも患者さん達に移植のことについて伝えていけたらと考えています。
布巻 秀克
特別講演で、福岡大学泌尿器科中村信之先生が腎移植についてお話してくださいました 腎移植により、末期の腎不全の患者様が水分、食事制限,週3回の血液透析や日に何度も腹膜透析液のバックを交換する事などの不自由さから開放され自由な生活が可能となり、さらに妊娠出産が可能になり、子供さんであれば正常に近い発育が可能になり全身状態が大きく改善し、長期透析合併症の改善、ひいては生存率が改善する。腎移植には生体腎移植と献腎移植の2つある 両者とも提供者の善意にもとづくものであり生体腎移植は提供者が血縁または家族による生体の片腎の提供 献腎移植は提供者が死後両方の腎臓を提供するもの 腎移植は年間1200例今までに2万人が受けており40年の実績がある 腎移植を行うと患者様の免疫応答により多かれ少なかれ拒絶反応が起きるため免疫抑制剤が使用される。血液型が適合していることがのぞましいが、血液型不適合であっても腎移植は可能であるただしその場合は移植前に患者様の血漿交換を行って血液型抗体価を低下させ脾臓を摘出する必要 また手術に耐えられるかどうか ドナー側に糖尿病、高血圧、心疾患、肝疾患がないかどうかもチェックする 移植後に腎臓に原疾患が再発することもありえる 移植後には3ヶ月内に多く、急激に症状が進行する 腎移植後感染症を起こしやすい
准看護師 氏名 桑本 崇
腎移植の進歩として、 ①術式の進歩 → 鏡視下のドナー腎摘出 ②免疫抑制剤の進歩 *(新たな感染症の出現) ③感染症への対応の進歩 ④ABO血液型不適合の腎移植も可能になってきている 感想: 今回の透析懇話会では、特別講演のほかに一般演題として「新型インフルエンザ対策の取り組み」(牧野医院)などの発表があった。当院でも感染対策としてマニュアルを作成し対応していたが、さらに、陰圧室増設など設備面の対応もとられていた。ここまでの対応が、本当に必要か?は分からないが、現在のところ院内感染は起きていないとの報告だった。 腎移植については、腎移植の基礎、現状などの話があったが、欧米と比べ、まだ一般的に浸透していない印象を受けた。技術的な面では、かなりの進歩を遂げているが、ドナーとなる人々に対する対応、倫理面、精神的な部分への対応がこれからの課題だと感じた。 当院では、移植を希望する患者さんはいないが、今後、希望や、説明を求められた時、きちんとした対応ができるようにしたい。
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