泌尿器科いまりクリニック忘年会

平成21年12月22日伊万里市の割烹上田で開催しました。ビンゴやその他で盛り上がり、二次会はスナックジールに行きました。この1年間皆様ご苦労様でした。

伊万里有田地区糖尿病勉強会

平成21年12月17日伊万里市ロイヤルチェスター伊万里にて開催され、院長、副院長が参加しました。佐世保中央病院糖尿病センター、松本一成センター長による特別講演、インクレチンと糖尿病治療、がありました。たいへんに判りやすく、臨床上にも有意義な講演でした。糖尿病は奥が深いのでよく知れば知るほど、自分の治療法について、これでいいのかと思いが出てきます。

日本人の糖尿病としての特徴は、高度の肥満が少ない、インスリン抵抗性は差ほど大きくない、インスリン分泌の得が少ない。欧米人と比べると日本人では食後のインスリン分泌が少し早くて量が少ない。良好な糖尿病のコントロールとしては、A1C6.5%未満、食後2時間の血糖値が140未満、血圧が130/80未満、中性脂肪120未満、LDl-chol120未満、HDL-chol140以上とされているが、20%未満しかこのようにコントロールされていない。低血糖は患者のトラウマになり、アドレナリンの過剰分泌で、発汗や、振戦、集中力低下、大脳機能低下、錯乱に至る。高血糖は他人には悟られないが、低血糖は他人にすぐ異常と判るので、低血糖を恐れている。英国のUKPDS試験では経口糖尿病薬を使用すると普通の人よりも倍以上体重増加があった。食事療法不十分な2型糖尿病に経口剤を使用すると高インスリン血症によって体重が増える。ピオグリタゾンは脂肪細胞の数を増やす。SU剤は食前低血糖になり、食後の高血糖との差が大きいので、空腹感が強いので過食しやすい。アマリールでも同じであった。インスリン自体も細胞増殖作用で体重が増える。2型糖尿病ではまずインスリン抵抗性が減るが有る程度以上は減らない。その後糖尿病になるにつれて膵臓β細胞機能が低下し続ける。理想の2型糖尿病治療は、低血糖をおこさずに食後高血糖を抑える。食欲亢進や体重増加をおこさない。膵臓β細胞機能に負担をかけない。

インクレチンは上部小腸のK-細胞から出るGIPと、下部小腸のL-細胞から出るGLP-1とがある。GIPはインスリン分泌作用が有り、膵外作用としては体重を増やす。GLP-1もインスリンを増やすが、グルカゴン分泌を抑制するので膵外作用としては体重を減らす。インクレチン効果を出す薬は2種類。インクレチンを分解する酵素のDPP-4の阻害剤:シタグリプチン、ビルダグリプチン、アログリプチン。もう一つは分解されにくいインクレチンかそのアナログ:エキセナチド、リラグルチド。シタグリプチンを飲むと12週間でHbA1cが0.8%減少する。2型糖尿病ではインクレチン効果が低下しているが、GLP-1の反応性は保たれているし、膵臓のβ細胞を保護する。そして、血糖依存性の効果があり、血糖値が多いほどインクレチン作用が増すので、低血糖になりにくい。そこで、2型糖尿病でA1cが8%未満で初めての治療薬として処方。あるいはすでに他剤でA1cが7〜8%であり、もう少し下げたい時に使用するのがよい。コントロール不良で他のSU剤をやめてそのかわりにシタグリプチンを飲んでも糖尿病が悪化する。エキセドナはアメリカドクトカゲの唾液から抽出されたもので、毎日2回注射するが、この時血糖値によって量を加減する必要は無い。注射すると血糖値に反応して効果が出るので、インスリンのように血糖値に注射量を合わせる必要がなくお気楽。副作用として30%に悪心嘔吐が有り、注射部位のかゆみもある。しかし、低血糖が少ない。リラグリチドは人のGLP-1誘導体なので、人に近いためにかゆみが少なく、毎日1回の注射で良いし、今毎週1回の注射剤が開発されている。両方の薬は外国では市販されている。インスリンに変わる薬として期待されており、BOT療法に代わり得る。

たいていの2型糖尿病にアマリール0.5錠1回とグリコラン3錠分3がある程度の効果があり推奨される治療法(バカチョン処方)。今後は、シタグリプチン1錠1回とグリコラン3錠分3に代わられるようだ。

唐津東松浦医師会学術講演会

平成21年12月14日唐津市シーサイドホテルにて開催され、院長が出席しました。久留米大学糖尿病性血管合併症・治療学講座、山岸昌一教授による特別講演:2型糖尿病の血糖、血圧管理、がありました。

糖尿病では全身の細小血管と大血管の障害が出る。そのために男女ともに健康寿命が15年縮まる。糖尿病は治らないので血管障害を予防することが糖尿病の治療。このために血糖や血圧の管理、高脂血症などの治療を集約的に行う。現在の定義では空腹時血糖126以上、食後2時間血糖が200以上で糖尿病。空腹時血糖110から126、食後2時間血糖140から200が境界型とされている。境界型の9から10%が糖尿病に移行する。食後血糖値が重要、朝食後1時間血糖180以上では心筋梗塞が3倍になる。180と言うのは重要で、これ以上で尿糖が出現するという値。昔自然の食物が少なかった頃の名残で、血糖180までは尿にも出さずに体に糖分を貯めていたようだ。糖尿病初期は食事療法や運動療法を3ヵ月行って改善しない場合は、薬が必要。糖尿病治療目標は、A1C6.5%以下、朝食後1時間血糖180以下、空腹時血糖130以下、尿ケトン体陰性。特に前2者が重要。尿病の薬物には大別して3種類有り、食後高血糖を防ぎ、かつ低血糖にならないようにする。

第一選択としては、グリニド:食後のインスリン初期分泌低下を防ぐ。家族歴があって、肥満でなく、糖尿病の初期に使用。ナテグリニドは食後の中性脂肪増加も防ぐ。食後の中性脂肪増加が血管を硬くしてかなり血管に良くない。

2としてはα‐グルコシダーゼ阻害剤:インスリン分泌増加を伴わずに、食後高血糖を防ぐ。中性脂肪も下げる。太った糖尿病に良い。victory試験ではベイスンがIGTから2型糖尿病への移行を防いだ。食後の糖吸収をなだらかにして、高血糖のスパイクを防ぎ、長期的な血管の硬化を防ぐ。日本人の食後血糖値のピークは1〜2時間、食後中性脂肪のピークは2〜6時間、両方減らした方が血管保護に効果的。

3としてはインクレチン効果がある。インクレチンの一種GLP-1が2型糖尿病では少ない。糖分を補給する時には静注よりも経口摂取の方がインクレチン効果のため。インスリン分泌が多い。インクレチンは分解酵素のDPP-4のために数分で分解されるので、インクレチン自体を投与しても効果が無い。そこで、DPP-4阻害剤が開発された。食後高血糖に対する有効性が有り、低血糖ではインクレチン自体が分泌されないので、低血糖も生じない。体重の増加も無く、膵臓のβ細胞の増殖効果もありそうだ。

2型糖尿病で、食後高血糖には、グリニド、α‐グルコシダーゼ阻害剤、DPP-4阻害剤を使用する。2型糖尿病で空腹時高血糖には、痩せた人にSU剤、肥満の人にピオグリタゾン、メトホルミンを使う。

薬のみではすべての糖尿病の治療は無理なので、インスリンも併用する。BOT療法として、今までの経口薬を続けてインスリンの使用料を少なくする方法も最近出てきた。

血圧の管理も大切。血圧115/75で始まり、20/10血圧が上がる毎に心血管系のリスクが2倍になる。HOT試験では、糖尿病患者の血圧を130/80以下にすると心血管イベントを51%抑制し、全死亡率を43%抑制した。血圧管理が重要であり、血圧130/80以下を目指す。欧米での成績ではACEとARBは同等の効果があるが、欧米ではACEの使用量が日本の4倍から8倍以上になっており、日本人に多い空咳と言う副作用があるので、同等には論じられない。日本ではARBが第一選択。

テレビフォーラム:糖尿病患者さんの幸せの実現のために

平成21年12月8日佐賀市武田薬品工業の佐賀営業所にて洪内科クリニック、洪尚樹院長と岡山大学大学循環器内科伊藤浩教授による講演がありました。院長が参加しました。以下はその要旨です。

糖尿病自体は完治出来ないので、合併症を防ぐことが治療の目的。そして、健常人と同じQOL、寿命の確保を目指す。ACCORD試験が有り、血糖値の管理とHbA1cの低下を目指した。血糖が減ってHbA1cは低下したが、死亡率に差がなかった。いろんな糖尿病薬の中で、exenatideとピオグリタゾンのみが動脈硬化に有効であり、この結果からADA:米国糖尿病学会から糖尿病のアルゴリズムとして、インスリンを主体として、他剤を組み合わせる強化インスリン療法、TOBが提唱された。しかし、これは間違っていないか。SU剤を第一選択とすることは、インスリン不足を補い、高インスリンを目指す。しかし、本態はインスリン不足では無くてインスリン抵抗性の増大。糖尿病では空腹時にはインスリンは少ないが、食後にはたくさん分泌される。インスリン不足とは言いにくい。SU剤は血統下降作用が強力だが、用量依存性が無く、長期使用による二次無効がある。

糖尿病は虚血性心疾患の重要な危険因子。高脂血症のLDLよりも糖尿病の方が危険。糖尿病があればそれだけで他の因子がどうであれ動脈疾患の危険を高める。他の血糖降下療法の大規模臨床試験でも、HbA1cが減っても死亡率に変化がなかった。

従来インスリンを多くする治療法が行われてきた。外因性インスリンを増やすためのインスリン注射、内因性インスリンを増やすためのSU剤。これらによってインスリンが増えると細胞増殖作用が起こり、MAP kinase pathwayが活性化し、細胞増殖し、動脈硬化が増悪する。過剰なインスリンとC-ペプチドは平滑筋細胞の増殖を促進する。 さらに空腹時の高インスリン血症は冠動脈病変の重症化に関連する。

糖尿病患者のある内科医の場合はインスリンを注射しながらグルメであったが、HbA1cが8.4有り、そこで、インスリンを中止して、インスリン抵抗性を下げるような治療、アクトス、ベイスン、グリコラン、グルファストでHbA1cが5.7に減った。

第6回佐賀県西部地区外科系懇談会

平成21年12月7日武雄市武雄杵島地区医師会館にて開催され、院長が出席しました。佐賀大学形成外科、上村哲司准教授による特別講演:糖尿病の下肢救済とボランティア活動、がありました。

米国では年間82000人の下肢切断が有り、原因は糖尿病が1位、足の傷が出来ると24%が下肢切断に至る。日本でも糖尿病の患者で10〜15%が一度は足の傷が出来る。このうちの24%が下肢切断に至るのでは無かろうか。そして、下肢切断後の予後は大腸癌の予後と同じくらい不良。糖尿病で血流障害を生じ、下肢の傷や壊疽が出来ると、まず血管外科や放射線科と協力し、血行再建術を行い、下肢の血流を確保して、傷の治療を行う。次に、佐賀大学形成外科が以前から行っている、タイ国での頭頸部の奇型に対するボランティア活動についての報告がありました。

佐賀県医師会設立62周年記念祝賀会

平成21年12月5日佐賀市成人病予防センターにて開催され、院長が出席しました。伊万里有田地区医師会からは高原先生、山元博先生の3人しか参加是ず、少し寂しい会でした。佐賀県の医師会からも若手の参加が少なかったようです。バイキング形式の懇親会で、イスとテーブルが用意され、料理はホテルニューオータニから出前が有り、久留米からのコンパニオンがいました。若手の医師や勤務医が少なかったのは、最近の医師会に魅力を感じていないからでしょうか。大勢の方が参加して盛り上がればよいと思っております。

平成21年度第1回佐賀医学会・日医生涯教育講座

平成21年12月5日佐賀市成人病予防センターにて開催され、院長が出席しました。3つ特別講演がありましたが遅れたので最後の一つしか聞けませんでした。久留米大学医学部免疫・免疫治療学講座教、伊東恭悟教授による、癌ワクチン療法の現状と方向性、がありました。以下はその要旨です。

ワクチン療法が効果が有る方と効果がないかたに大きく分かれる。効果が有る方も居れば、かえって有害な副作用が有る方も居て、今のところ積極的に勧める治療法では無いかもしれない。がんの集約的治療法の一つとして見なすことも出来得る。2006年に大いに開発されて、企業もたくさん参入したが、効果があまり無く、現場の混乱と落胆が有り、副作用が多いので企業が撤退している。癌の治療は手術や放射線、抗がん剤を組み合わせるのが良いが、免疫力を低下させない方法が良い。免疫力の目安はリンパ球1,000個以上を見る。血中リンパ球1,000個以下になる時にはその治療法を中止する。がんの予防法の一次予防には、食物、タバコ、ウイルスを避ける、などが有り、がんになってからこのよなことに注意しても遅い。低カロリーの食物が、糖尿病のみでなく、動脈硬化、脳血管障害、さらに癌も予防することが、サルの実験からも判ってきた。しかし、カロリー制限猿はこれらの病気を予防出来てもなぜか生存率は、カロリー制限のないサルと同じであった。高カロリー食が癌を出来やすくすることは、PTEN(ピーテン、Phosphatase and Tensin Homolog Deleted from Chromosome 10)遺伝子を抑制するのでは無かろうか。癌の二次予防としては、早期発見早期治療が有る。癌の治療ワクチンはすでに、子宮頸癌、肝臓癌、胃癌で実用化されている。久留米大学では、HCVペプチドワクチンを打ち続けて肝臓癌の発生を皆無にしたと言うデーターがある。

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アボルブ発売記念講演会:前立腺肥大症の新しい治療戦略

平成21年11月30日佐賀市マリトピアにて開催され、院長が参加しました。長崎大学泌尿器科、酒井英樹教授による特別講演:前立腺肥大症の新しい治療戦略がありました。前立腺肥大症と言う地味なテーマでしたが、新しい治療法をわかりやすく説明されて、たいへんに有意義な講演でした。

最近、札幌の徳永教授らによる1300人の日本人の前立腺肥大症を3年間調べた疫学調査が有り、それによると、前立腺の平均容積が平均35mlであり、3年間で35mlから39mlに増大した。PSAの平均は4.7で、これが3年間で5.2に増えた。容積30ml以上で急性尿閉と手術必要が有意に多かった。外国のMTOPS試験では前立腺肥大症の3000人をα‐遮断剤と抗男性ホルモン剤のfinasuterid(プロペシア)とで治療したところ、α‐遮断剤のみでは排尿を良くするが肥大症の進行を抑えることは出来なかった。いっぽう、両者を併用すると排尿も改善し肥大症の進行を抑えることが出来た。アボルブはテストステロンをDHTに変換する1型と2型の5α還元酵素を遮断する。そして、アボルブはLHを抑制しないので、血中テストステロンはむしろ10〜20%増加する。この時血中のDHTは10分の1に減少するので、頭皮にも影響が少なくむしろ頭皮が増える。ハルナールとアボルブの併用試験では4800人の4年間の観察で症状が改善し、肥大症が26%縮小した。とくにTZが萎縮した。急性尿閉や手術が減り、前立腺肥大症も縮小した。PSAは半分に減ったが、癌の検査としては2倍に補正すれば良い。この状態でもPSAが増加する場合はむしろ前立腺癌として発見しやすくなるようだ。

まとめとして、前立腺肥大症は進行性の病気、大きさは30ml以上、早期から治療する方が良いα‐遮断剤は治療直後から効果があり、効果発現の遅いα‐遮断剤と併用することが望ましい。

第42回九州人工透析研究会

平成21年11月29日福岡市アクロスにて開催され、泌尿器科いまりクリニックから院長と看護師ら7人が参加して、勉強しました。ランチョンセミナー:九州大学包括的腎不全治療学、鶴屋和彦客員准教授による、CKD患者におけるESA(Erythropoietin Receptor Stimurating Agents エリスロポイエチン受容体刺激剤)投与の意義、という講演が有りこれを拝聴しました。CKD(慢性腎不全)では、貧血と心機能と尿毒症が相互に関係しあっており、心腎貧血症候群を呈している。そこで、貧血の改善が心機能と腎機能の予後を改善するので、貧血の治療としてESAが必要だが、いろいろな研究では、貧血を過度に改善するとかえって予後が悪くなるので、適度に改善することが望ましいとされている。2006年のCREATE テストでは、CKD出の貧血群を軽症と中等症に分けたが両群の生存率などに有意差は無く、ただQOLとして疲労感の改善のみが有意差があった。2005年のCHOIRテストでは、貧血を改善した方がかえって予後が悪かった。そこで、FDAもESAの使用について勧告を出した。福岡腎内科クリニックでは5時間以上の長時間透析患者で、貧血が軽くて、ESAの使用量も少なく、生存率が高かった。造血作用の無いESAをCKDマウスに投与することで、CKDマウスの学習能力と記憶力の低下を防いだ。尿毒症で、脳内酸化ストレスが増え、脳神経細胞の変性が起こり、学習や記憶力の低下が起こるのを防ぐことが出来、ESAの新たな作用があることが判ってきた。

ポスター展示でも看護士や臨床工学士、栄養士らの活躍が目立っていました。フットケア、シャントの保護・消毒、クリチカルパスの索性、かゆみ対策、透析手順などの標準化・簡素化の工夫などがあり、盛会でした。

透析室 臨床工学士 布巻秀克

いろいろ興味深い講演ばかりでしたが、特に興味深かった3点をレポートにします。1 透析液を中心に考えて○透析治療において透析液の正常化が必須であることは当たり前である。透析液正常化に対する努力をしていない施設は透析をする資格がないとまで言われている。当院ではコンソール1台1台にカットフィルターを設置しており、透析液正常化の目安であるエンドトキシンも1以下と基準値をクリアしていますので、よい透析をしているといえます。透析液のカルシウム濃度は、現在カルシウム濃度は2.5mEq/L3.0 mEq/L が主に使用されています。全国的には以前は3.0 mEq/Lが主流でしたが、現在では2.5 mEq/L50%、3.0 mEq/L50%ぐらいだと言われているが佐賀県には3.0 mEq/Lを使用している施設が97%となっており、佐賀県は全国平均より遅れています。また病院によっては面白いことに2.5 mEq/L3.0 mEq/Lの透析液をわざわざ混合して2.75 mEq/Lにして使用しているところもあった。しかしどちらの透析液にもそれぞれ利点、欠点があり、どちらがより優れているかを言うのは難しい。2 透析液の脱気不足によるダイアライザーを介して気泡が混入した事例 透析中に患者血液にエアーが混入するという事故についての講演があった。回路からの直接の空気混入ではなく、透析液中の空気がダイアライザーを介して患者血液に入ったという事例だった。今までに例がなくこの講演を聴くまでよく分からなかった。どうしてダイアライザー中にエアーが混入して血液のほうに移行するのか。これはコンソールの脱気ポンプ(透析液中のエアーを抜く機器)の不具合によりで起こった事故であった。点検不足であったようである。透析機器の定期点検の重要性を再確認させてくれた事例だった。3 運動療法によるリクセルでのβ2ミクログロブリン吸着量の変化 長期血液透析の合併症として手根管症候群に代表される透析アミロイドーシスがあり、β2ミクログロブリン蓄積との関連が言われている。手根管症候群を発症した患者などにはβ2ミクログロブリンを吸着するリクセルが使用される。このリクセルを使用した透析中に下肢の運動を組み合わせると、β2ミクログロブリンがより多く除去できたそうだ。詳しいメカニズムは分かっていないそうだが、下肢血流が良くなるとβ2ミクログロブリンがより多く除去される可能性があるという面白い発表だった。別の会場でも色んな講演があっており、他にもたくさん聴きたかったのですが、また機会があったら聴きにに行きたいと思います。

看護師   氏名 副島江美子

講演題:「 透析室における緊急離脱法の取り組み 」演者:医療法人天神会 新古賀クリニック 透析室 内容抜粋: 緊急離脱法や避難訓練を経験しているスタッフが少ない現状から、緊急離脱法の習得と意識の向上を目的に、手順書とビデオを作製しスタッフへの教育、訓練と、又緊急時に適した離脱法の選択について検討された。 (方法) 各緊急離脱法(ハサミ切断法、抜針止血法、保護栓ロック法)の手順書と ビデオを作製 離脱法の訓練と離脱に要する時間を測定 (考察) 離脱時間の測定では、ハサミ切断法のみ有意差を認めたが、緊急時は安全 で確実性の高い方法が推奨されており、日常的に実践している抜針止血べ ルト法や保護栓ロック法の選択が望ましいということだった。 (感想) 当院でも、安全対策委員会の避難訓練は年に一度行われているが、スタッフが患者となり 訓練の形をとっているものの実際に離脱の仕方は練習した方がよいのかと思う。離脱の方法も年々変わり、今は血液を残して抜針方法をとられている。今後は透析室でも計画をたてて実際行いたい。他は、KYT(危険予知トレーニング)を取り入れ、何回も繰り返し行うことで、事故防止能力を身に付けることができたと発表があり、一人では考えられない問題点、危険にきずかないことが、スタッフ全員で話し合うことで行動目標を設定できた。毎日同じことをしてても、ほんの少しの油断、見落としで事故をおこす。そのミス、インシデントを減らしていくことが課題である

 看護師  池田 清美

日時 平成21年11月29日()  場所 アクロス福岡 <全透析患者に家族面談を試みて>  宇士中央クリニック  山代 美樹 透析看護師は患者の全体像を理解する必要があるが、透析中の短い関わりでは難しく、今回面談を勧める案内状を配布し希望のあった126名中74名に対し主治医・管理栄養士・受け持ち看護師が同席し30分程の面談を行いその後、看護師に聞き取りを行なった。(結果)患者の日常の様子をよく理解でき面談後家族に連絡し易くなったとの意見が聞かれ、さらに、特に介入すべき問題がないと思っていた患者でも家族内では、かなり問題があって驚いたなどの意見もあった。(考察)以前より自己管理困難など問題があると思われる患者の家族に対しては、面談を行ってきたが、今回、全く問題がないと思われた患者でも家庭内ではかなり問題がある場合があることが分かった。今後、面談未施行の家族にも面談を行い さらに患者理解に努めたい。(感想)当院でも受け持ち看護制になっており、私自身患者の食事面・水分管理面で問題抱え、家人との面談や連絡ノ-トを活用していますが、食事内容面では年に1回程度の調理実習も必要と考えます。口頭で説明するだけでは伝わらない面もあります。調理実習を通じて家族の方との関わりも深まり透析治療では塩分・CaiPの摂取に理解頂き家族の協力が大切と考えます。

中村 雅美 

中2日の体重増加5%以内を目指して 医療法人 福満会  ふくみつ病院【目的】体重増加に対する認識を高め、中2日の体重増加5%以内を目指す【期間】平成21年3月~4月【対象】平成20年12月~平成21年1月間で中2日の体重増加5%以上が5回以上の午前外来透析患者27名【方法】聞き取り調査表を作成し、体重増加率の算出、日常生活、食生活の振り返りを一緒に行った。資料を用い、血管障害等の合併症予防や、安定した透析につながることを説明し、中2日の体重増加5%以内に努めた。【結果】今回の取り組みで、中2日の体重増加5%以上が5回以上の対象者が27名から16名に減少した。【考察】患者とのコミュニケーションからお互いに問題点を認識し、行動変容を患者と具体的に考える事が重要である。そのためには、身体面、精神面、社会面など患者のあらゆる側面からの情報収集が不可欠である。また、塩分制限と水分制限の指導は同時に行うことが望ましい。【結論】透析歴が長くなると患者との馴れ合いで指導が疎かになり、指導の諦めや見過ごしが生じてしまう。今回の取り組みを継続し制限だけの指導ではなく、患者が生きる希望や生きがいをもてる透析看護を提供していく。 当院でも、中2日の体重増加の多い患者には、その都度、指導を行ってきている。体重増加の原因については、食事内容や排泄状態などを聞き振り返ってもらっているが、患者によっては食事内容をおぼえてないということもあり、そういう時は紙に記入してきてもらい、内容を患者と共に確認し指導していく。原因として、塩分の摂りすぎで水分摂取が多くなり体重増加につながっている。だが、食事だけの増加ではなく、その日にあった行動についても聞き、考えなければいけない。その為にも、患者自身にも体重増加に対する認識をもってもらわなければならない。透析歴が長い患者に対しては、ある程度の知識もあるため指導が難しいこともある。食事に関しては、栄養指導を毎月行ってもらっているので、栄養士との連携を図り、看護師、患者、栄養士との繋がりをもち、何でも聞けるようにすること。各スタッフとの連携をとることにより、より良い指導が行えるのではないだろうかと思う。患者にとって、透析療法は日常生活には欠かせないものでもあるため、安定した透析ができるよう、指導していくことは大切であると思った。

看護師   吉田和子

 一般演題 <危機管理> 当院透析室におけるKYT(危険予知トレーニング)の取り組み 事故防止能力を身に付けることを目指して  医療法人 同心会 古賀総合病院 腎センター 「対象」 透析室看護師27名 患者数160名 一人で担当は58名  方法  1、KYT及びサービス改善票の必要性について勉強会を行う2、KYT(基礎4ラウンド法)1回/月行う 3、KYT 前後のサービス改善票の分析を行う 4、KYT前、半年後、1年後に危険予知・サービス改善票に対する意識調査を行う 結果  一人では考えられない問題点や潜在的危険に気づき、行動目標を設定する事が出来た。実践では指差し声出し確認、唱和を行い、それを習慣化させるために実践状況のチェック、サービス改善票の開示を行う事で意識を刺激した。KYTによりスタッフ間の連携、情報共有ができた。「感想」透析開始前に、透析室目標の唱和を行っていますが月に数件のインシデント報告が出ています。透析はほんの少しの油断や見落としで重大事故に繋がります。ミスがおきたら問題を共有し、短時間でも話し合いの場を持ち、意識の向上に努め、安全な透析医療を提供していきたいと思います。他の施設の発表で、避難訓練時の搬送では、レスキューシート・ウレタンマットレスを使用する事で患者をマットレスごと、3階透析室から1階までスタッフ一人で滑り降ろすことが出来たとの発表もあり驚きました。当院透析室でも避難訓練時には、担送患者を搬送する時には苦労してます。避難訓練時の搬送の仕方は、今後の課題です。

テレビフォーラム:透析患者のかゆみ対策

平成21年11月12日佐賀市中外製薬佐賀営業所(中島幸一所長)会議室にて開催され、院長が参加し、勉強しました。防衛医科大学腎臓内科、熊谷裕生准教授による講演がありました。透析患者の73%に何らかのかゆみが有り、43%に中等度以上のかゆみが有り、74%に毎日かゆみがあり、48%はかゆみで目が覚めると言うほどに、かゆみ対策は重要。今まで抗ヒスタミン剤を処方していたが、あまり効果が無かった。今回東レから新しいかゆみの薬、レミッチが発売された。内因性ペプチド(生体内オピオイド)の3つの受容体μ、κ、δの内κに作用するのがレミッチ。μ受容体がかゆみを増強する、κ受容体はかゆみを抑制する。実際の効果もかなり良かったし、1年経過後も薬物依存生は無かった。

第61回日本泌尿器科学会西日本総会

平成21年11月7日高松市において開催され、副院長が出席しました。以下はその報告です。

卒後教育セミナー6「下部尿路閉塞性疾患:前立腺肥大症の診断と治療」 Ⅰ.下部尿路症状の意味と評価 本間之夫(東京大学)  ・前立腺肥大症は前立腺の良性過形成による前立腺の腫大にともない様々な下部尿路症状を呈する疾患である。  ・中高齢男性の下部尿路症状は前立腺だけが原因とは限らない。前立肥大症は下部尿路症状、良性前立腺腫大、膀胱出口部閉塞が重要な3要因となっている。  ・下部尿路症状は畜尿症状、排尿症状、排尿後症状の3つである。  ・国際前立腺症状スコア(IPSS)は使うことが推奨される。  ・前立腺肥大症ではしばしば過活動膀胱が並存する。その評価には過活動膀胱症状スコア(OABSS)が推奨される。

.前立腺肥大症の診断と治療  杉元幹史(香川大学) ・下部尿路症状の主な原因である前立腺肥大症はQOL障害度が大きい。 ・前立腺肥大症は進行性の病気である。高齢者の大部分が組織学的に前立腺の肥大をきたしているが、そのすべてが症状を有し治療が必要になるものでない。 ・前立腺肥大症は下部尿路症状、良性前立腺腫大、膀胱出口部閉塞の3つで構成されている。わが国の前立腺肥大症の診療ガイドラインは下部尿路症状の評価→良性前立腺腫大の評価→膀胱出口部閉塞の評価となっている。 ・治療は患者の症状、患者の好み・嗜好と行動とエビデンスを総合的に考慮して決定すべきである。
特別講演4「STI最前線の話題~STIの新しい治療戦略~」  澤村正之(新宿さくらクリニック) ・日本性感染症学会では感染症であるので、STDからSTI(Sexually Transmitted Infections)と呼称ことになった。 ・東京新宿で開業している。淋菌ならびにクラミジア感染症等の細菌性STIが減少し、尖形コンジローマならびに性器ヘルペス、HIVのウイルス性STIが増加している。 ・性器ヘルペスで年6回以上再発例は、バラシクロビル500mg/日を1年以上服用すべきである。・尖形コンジローマの新規の治療薬であるイミキモドは、免疫賦活作用を介してHPV感染細胞を障害除去し疣贅を治療する。患者のライフスタイルに合わせて6~10時間前に塗布する。疼痛やびらんは炎症反応の効果のあらわれであり、副作用ではない。早めに休薬し早めに再開する。

パネルディスカッション2「Office Urologyの現況と将来展望」  ・泌尿器科開業医の実態のデータは少ない。総合病院では見たことない主訴の患者が受診するが、そのトレーニングは開業後にそれぞれ試行錯誤でやっている。 ・「泌尿器科だけで食べていけるのか」不安がある。いつもおなじ医師が、時間をかけて診察できるメリットがある。 ・泌尿器科はプライマリー・ケアからのニーズが高い。しかし、勤務医や他の開業医との連携は不十分である。 ・インターネットへの情報発信や電子カルテに蓄積したデータベースを活用すべき。 ・大病院から離れた場所での泌尿器科診療所の開設使命はcommon disease(排尿障害、尿路感染症、結石など)の患者の診断・治療、より専門医への紹介が必要かどうかの判断(小児泌尿器科、男性不妊症、性機能障害など)、悪性腫瘍の確定診断を行い大病院に紹介することである。

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伊万里有田地区医師会学術講演会:過活動膀胱と間質性膀胱炎:

平成21年10月29日伊万里市迎賓館で開催され、院長と職員8人が参加し勉強しました。特別講演は原三信病院、泌尿器科の武井実根部長で、過活動膀胱と間質性膀胱炎についての臨床に基づいた分かりやすい講演でした。過活動膀胱の中にも間質性膀胱炎の患者が混じっているかもしれないので、そのつもりで診療が必要。以前のmotor urgency、sensory urgencyと言う言葉が国際尿禁制学会で使用されなくなったが、その区別は必要。東大の本間教授がHSB(Hyper Sensitive Bladder)と言う新しい疾患群について提唱している。ことなどがあり、有意義で分かりやすい講演でした。

その後は久しぶりの会合で親交を深めました。

第6回佐賀ウロギネコロジー研究会

平成21年10月9日佐賀市マリトピアで開催され、院長が参加し世話人会と研究会に出席して勉強しました。佐賀大学産婦人科の中尾佳史講師による、広汎子宮全摘術後の排尿管理と、亀田総合病院野村昌良先生の特別講演、骨盤臓器脱の新たな展開がありました。骨盤臓器脱に対してメッシュを使用したTVM療法の経験についての講演でした。泌尿器科いまりクリニックではまだ行っていない方法ですが、最近フランスから導入され、骨盤臓器脱の標準的治療法の一つとなる治療法です。手技的に難しくて、合併症もそれなりにありそうな手術ですが、今までどうしようもなかった患者にも完治出来ると言う素晴らしい方法のようでした。

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