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食事療法 〜腎臓病について〜

これは、当院の透析患者のお孫さん(高校1年)の研究です。

食事療法 〜腎臓病について〜1年3組 ○○ ○○

T 題目設定の理由私の祖父は腎臓病を患っています。しかし、現在は食事療法と人工透析という治療を行うことで元気に生活しています。腎臓病の食事療法では、食事制限や水分制限をしたり調理に工夫が必要です。そんな祖父には、食事のない様を制限しながらもできるだけおいしく・楽しく食べてもらいたいと思います。そして、いつまでも元気で過ごしてもらえるよう、腎臓病の食事療法について取り組みました。

U 実施計画

?・実態調査   A  腎臓病について知る

  • 腎臓のしくみ: 腎臓は腹部の背中側にあります。背骨の左右に一つずつ合計2個ある臓器です。握りこぶしくらいの大きさで、そら豆を大きくしたような形をしています。とても小さな臓器なのですが、体にとっては大きなはたらきをしています。
  • 腎臓のはたらき: 腎臓には1日で約1300〜1500リットル、毎分約1リットルの血液が送り込まれています。そこで、体に必要な水・電解質・アミノ酸・タンパク質などをろ過して血液に戻します。 また、体にとって有害なものや不要なものを尿として1日に約1.5リットル排泄します。 これは人間の生命活動を維持するために重要なはたらきです。
  • 腎臓の症状:腎臓病の主な症状は、尿に異常・むくみ・高血圧・高窒素血症・貧血・尿毒症などがあります。

 腎臓のはたらきが悪くなると、全身症状にあらわれ最悪の場合には死に至る病気です。そのため、適切な治療と食事療法を行うことが大切です。

  • 人工透析について:腎臓のはたらきに変わって、体外で血液をろ過する治療法です。

祖父は人工腎臓方式の透析をしています。一回の透析治療に約4時間かかります。機能が低下している腎臓の替わりに、体内の血液を取り出して、機械でろ過するのです。

 大変つらい治療方法で、その負担を少しでも減らすために、同時に食事療法を行わなくてはなりません。

   B 祖父の健康状態、生活状況を調べる

      私の祖父は腎臓病のため、平成3年に片方の腎臓を摘出しました。その後は、病院に通院して治療をしています。その間は食事制限と運動制限を続けていましたが、平成14年1月から週2回の透析治療をはじまりました。現在は透析が週3回に増え、食事療法を続けています。透析治療や、食事制限は大変です。好きだったお酒も制限して、ほとんど飲めなくなりました。けれども、きちんと制限することで、祖父は山や畑の仕事をしながら元気に暮らしています。祖父自身が治療で大変なことはもちろんですが、それを食事の面から支える家族も大変です。私と祖父は近くですが、別の家に暮らしています。主に食事の世話は祖母や叔母がしています。私も孫としておじいちゃんのために出来ることをしたいと思い、おいしく・楽しく食べられる腎臓病制限食献立を考えることにしました。

?・問題点の把握

食事制限について調べる:  まず、腎臓病の症状で制限しなければならない栄養素を調べました。

  • 腎臓機能低下がある場合 → たんぱく質の制限
  • 高度なたんぱく尿がでている場合 → たんぱく質の制限

→ たんぱく質を摂取しすぎると、血液中の尿素・窒素・リンが増加し、

体の中が酸性になって正常な臓器の働きが妨げられるからです。

  • 高血圧やむくみがある場合 → 塩分(ナトリウム)の制限

→たくさんとると、血漿中の塩分が濃くなり、体重の増加やのどの渇きが強くなるので制限します。

  • 尿量減少やむくみがある場合 → 水分の制限

→水分が体の中にたまりすぎると“むくみ”“血圧上昇”などがあらわれるからです。

  • 高カリウム血症のある場合 → カリウムの制限

→カリウムは多くても少なくても生命の維持に大きな影響を及ぼします。

  • 高リン血症のある場合 → リンの制限
  • どのような症状でも、適切なエネルギーの確保

→たんぱく質を制限するとエネルギーが不足しやすくなります。

 不足すると栄養状態が悪くなったり、高カリウム血症になります。

?・改善と工夫

   祖父においしい食事を食べてもらう:病気の制限食というと“おいしくない”“難しい”というイメージがありますが、いくつかのポイントを気をつければそんなに難しいことではありませんでした。透析治療をしている人にとっては、特に食べていけないという食品はなく、制限の範囲以内で色々なものを食べてよいことが分かりました。特に注意することは塩分の制限です。そこで、家庭でできる減塩方法を考えてみました。

  • 減塩の進め方7か条☆
  • 調味料は量って使う。
  • 濃い味の漬け物、つくだ煮、加工食品などはごく少量に、または食べない。
  • 汁ものは1日1回まで。
  • 麺類はつゆ、スープを残す。
  • 野菜やスパゲティゆでるとき塩を入れない。
  • 低塩でもおいしく食べられる工夫をする。
  • 外食、市販の惣菜、インスタント食品はできるだけ避ける。

今回は、祖父のために少ない塩分でもおいしく食べられる工夫を考えました。実際に献立をたてるときに、気をつけたことを調理のポイントとしてまとめました。

  • 新鮮な材料を選ぶ
  • 酸味を利用する
  • 香味野菜・香辛料を使う
  • だしをきかせる
  • 適度な焦げ目をつける
  • 油と使う
  • 歯ごたえを生かす
  • 味付けは重点的に
  • 味を強く感じるように表面味を付ける

 実際に調理した献立を紹介します。

献立の紹介
? 親子どんぶり コンソメスープ フルーツヨーグルト
? すきやき 酢の物 リンゴのコンポート ご飯
? 薄あげサンド焼き イカ大根 れんこんサラダ ご飯 コーヒーゼリー
? ポテト入り海老フライ 豆腐のかにあんかけ キャベツの香味和え ご飯

V実施状況
1  ・実態調査
祖父本人、祖母や家族に話しを聞きました。その他に、分からないこは本や資料で調べました。また、祖父が通院いている病院の栄養士さんから、食事療法について詳しくお話を聞くことができました。

W 評価
? 祖父の食生活や健康状態、腎臓病について理解できた。
? 腎臓病制限食の知識を深め、実際に献立作成・調理ができるようになった。
? 塩分を控えた料理を食べることで、家族の健康意識が高まった。

X まとめ
現在の私達の食生活は塩分をちりすぎ、生活習慣病の原因と言われています。制限食作りから考えた、☆減塩の進め方☆と☆調理のポイント☆は、腎臓病の人だけではなく、私たちにとっても生活習慣病の予防に大切なことだと気がつきました。みなさんの食生活にも、生かしてください。腎臓病の食事療法で、低たんぱくで塩分の低い食事を長く続けていくと毎日の食事が味気ないものになり、食欲不振になることがあるそうです。しかし、腎臓病の人はしっかりエネルギーを確保しなければならないので、私の祖父がそうならないようにこれからも工夫して、家族みんなでかんがえていきたいと思います。今回、病院の栄養士さんから、腎臓病の人のために特別に作られた食材があることを教わりました。低たんぱくのご飯やうどんなどの炭水化物食品や高エネルギーのゼリーなど、腎臓病の人用に特別に作られた“治療用特殊食品と”と呼ばれているものです。これからは、このような食品についても勉強して、献立に取り入れながら、祖父がいつまでも元気でいられるように取り組んでいきたいと思います。

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